「帰路につく」とは
「帰路につく」とは「帰り道に向かう・目指す・戻る」という意味です。シチュエーションとしては、仕事を終えて「帰路につく」、旅先から「帰路につく」、一杯飲んだ後「帰路につく」などが思い浮かびます。
帰る場所は基本的には家・自宅が想定されますが、場合によっては会社であったり、逗留先であったりもするのではないでしょうか。
「就く」?「着く」?
「帰路につく」と漢字で書こうとするとき、「つく」をどう書いたらよいのか、迷う方が多いのではないかと思います。候補に上がるのは「就く」と「着く」です。
「就」を「つ(く)」と読んだ場合の語義は「ある方向に進む・赴く」あるいは「ある状態に近づく・ある物に接近する」です。一方、「着」は「移動して達する」ということを指します。「就」と「着」には、アクションを起こした瞬間(もしくは最中)なのか、終了した状態なのか、という違いがあります。
「帰路につく」と言うときは、帰る方向に向かっている状態で、まだ出かけた先にいるか、帰る途中にあります。まだ、帰るべき場所には到達していないときに使います。ですから、これを考慮すると、「つく」は「就く」を選択するのが正しいようです。
「帰路」の後に続くのは?
ちなみに、「帰路」の後に続くのは「つく」だけではなくて、ほかにもいくつか表現があります。「帰路を辿る」「帰路を急ぐ」「帰路を踏む」「帰路に向かう」「帰路を探す」などがあります。覚えておくと役に立つかもしれません。
「帰路」とは
「帰」は、人が戻っていく様子を表します。古い中国の用例では「娘が嫁ぐ」あるいは「離婚して出戻る」といった意味で使われていました。ですから、家というのは重要なキーワードで、「帰る」とはすなわち自宅や居場所に戻るということになります。
「路」は「みち」と読めます。「途・道・路」はいずれも「みち」で、現在は区別なく使われていますが、中国の古い時代では車が通行できるみちの幅を表しており、広さによって使い分けられていたそうです。
「路」には「方面」という意味もありますが、路が一番広いみちを指していたことを考えると、それも納得がいきます。「帰路」は家への明確な道順というよりも、家がある方面と解釈すべきかもしれません。
「帰路」と「岐路」
「帰路」と「岐路」はどちらも「きろ」と読みます。「岐路」とは「分かれ道」のことで、実際の枝分かれした道路や脇道も指しますが、多くは「人生の岐路」といった比喩的な使い方をします。
言い回しとしては「岐路に立つ」「岐路にある」「岐路に迷う」と続けます。「岐路につく」とは続かないので、使い間違えないように気を付けましょう。
「帰路につく」の使い方
以上を踏まえて、例文を挙げます。実際の日常会話の中で使われるケースは少なく、どちらかというと書き言葉・文章の中で使われることが多いようです。
- 一晩中先輩に付き合わされたが、朝日が射すころになって、ようやく帰路につくことができた。
- 海外でのミッションを終えて帰路についたのは、出発から数ヶ月後のことだった。
文学作品の用例としては、石川啄木『鳥影』に、以下のようなシーンがあります。
「帰路につく」の類語
「帰路につく」の類語としては「帰途につく」「家路につく」「帰郷する」「帰宅(帰国)の途につく」「帰投する」「帰還する」などが挙げられます。
「帰路につく」を英語で
leave for home:「帰路につく」と同じく、まだ家には着いていません。
on her(his) way home:こちらも、帰り道の途中です。
fly home:飛行機を利用して「帰路につく」ということから、大急ぎで飛んで帰るということになります。
Fly Away Home:映画『グース』の原題です。
いずれもhomeという言葉が入っている点がポイントでしょう。帰るところはやはりhome(=家・家庭・故郷)ということのようです。