「温厚篤実」の意味
「温厚篤実(おんこうとくじつ)」とは、穏やかで人情に厚く誠実な人柄のことを表す言葉です。「温厚」は穏やかで優しく、情が深いことを意味し、「篤実」は人情に厚くまじめで親切なことの意味です。「篤実温厚(とくじつおんこう)」とも言います。
「温厚篤実」の由来
「温厚篤実」は、「温厚」と「篤実」という別々の単語が合わさってできた四字熟語です。それぞれの言葉の由来を見てみましょう。
「温厚」の由来
「温厚篤実」の「温厚」は、中国の『礼記(らいき)』という「礼」について書かれた書物の次の一文が由来となっています。
天地に存在する温厚の気候は、東北の方角から動き始めて東南の方角で最強となるが、これが天地の盛徳の気であり、仁徳の気でもある。
これは、客人をもてなす時にどの方角に誰が座るのが良いかということを書いた文章の一部です。「温厚」は始め暖かい気候のことを指していましたが、徐々に人柄が穏やかであることを意味するようになりました。
「篤実」の由来
「篤実」の「篤」という文字には、真心がこもって念入りである、手厚い、という意味があります。そこに「実」という、真心や誠意を意味する文字が加わって、人情に厚く誠実なことを表す「篤実」という言葉になりました。
出典は「五経」の一つ「易経(えききょう)」という、占いの理論と方法が書かれた書物の次の文であると言われています。
“大畜は、剛健篤実にして輝光あり、日にその徳を新たにす。”
「大畜」とは「易経」の六十四卦のひとつで、占いを判断する形の一つのことです。
この占いの解釈は、
“「大畜」の時は蓄える時なので、障害があっても粘りづよく何ごとも手厚く取り組み、中身と実質を蓄えることによって日々新たに成長できれば、必ずその徳は輝いて外にもれ出るだろう。”
ということです。
「温厚篤実」の使い方
「温厚篤実」は、人の性格を表しており、相手の人柄を高く評価する時に使う誉め言葉です。
非常に丁寧なとても良い意味を持つ表現ですが、他者への誉め言葉として使う言葉なので、自分自身に使うとおこがましく非常識な印象を与えてしましますのでご注意ください。
「温厚篤実」の例文
- 「温厚篤実」で近所でも評判の好青年の彼のもとには、いつもお見合いの話が尽きない。
- 「鬼の副長」と恐れられた新選組の土方歳三は、晩年は打って変わって「温厚篤実」な性格で若い隊士たちに慕われていたらしい。
- 社長の「温厚篤実」な性格が社風にも表れているのか、あの会社の社員さんは全員とても丁寧で誠実な接客をする。
「温厚篤実」の引用
『二千六百年史抄』菊池寛
『郷愁の詩人 与謝蕪村』萩原朔太郎
『論語物語』下村湖人
※青空文庫出典
「温厚篤実」の類義語
- 温厚質実(しつじつ)
意味:穏やかで、優しく誠実な性格のこと。 - 温順篤実(おんじゅんとくじつ)
意味:穏やかでおとなしく、素直で人情深く誠実なこと。 - 温柔敦厚(おんじゅうとんこう)
意味:穏やかで優しく、思いやりがあること。 - 温良恭倹(おんりょうきょうけん)
意味:穏やかで優しく、人を敬って礼儀正しくひかえめなこと。
「温厚篤実」の対義語
- 傲岸不遜(ごうがんふそん)
意味:おごりたかぶって相手を見下した態度をとるさま。 - 傲慢不遜(ごうまんふそん)
意味:いい気になって人を見下すさま。 - 傲慢無礼(ごうまんぶれい)
意味:態度が横柄で礼儀正しくないさま。
「温厚篤実」のまとめ
「温厚篤実」は、相手の性格や人柄をほめる最上級の誉め言葉で、とても丁寧な表現です。また、「穏やか」「優しい」「誠実」などの複数の要素を端的に表現したい時にもとても便利です。
結婚式のスピーチやビジネスシーンなどの正式な場面で、相手の印象を述べたり、紹介する人の性格を説明する時などに使ってみてはいかがでしょうか。