「一言居士」の読み方と意味
「一言居士」という四字熟語は、「いちげんこじ」または「いちごんこじ」と読みます。「一言」は「ひとこと」とは読みませんのでご注意ください。
「居士(こじ)」とはこの熟語の場合、ある性質を持った男の人に対し、ややさげすみのニュアンスをこめて表現する接尾語です。そして「一言居士」とは「何かにつけて、ひとこと意見を言わずにはいられない人」を指す言葉です。「何かあるたびに口を差し挟み、小うるさい人」といったニュアンスを持つ熟語が「一言居士」だといえます。
「一言居士」の由来
「一言居士」の「居士」とは、元来は仏教用語から由来しているといわれます。古代インドでは資産家の家長を指す梵語だったそうです。さらに中国では「学識や高い能力があっても仕官せず、在野に居る男の人」を指しました。
日本では「出家をせず在家のまま仏教の修行をする男子」を意味しました。その一例では、安土桃山時代に、茶道の始祖とされる千利休が、正親町天皇より「利休居士」の称号を与えられた例が知られています。また江戸時代には剣や弓の達人なども「居士」と称されるようになりました。
さらに江戸期には、「居士」は男性が死亡した後の戒名につけられる名称となりました。こうした呼称が転じて、ある特徴を持った男性に対し、揶揄するような意味合いで「○○居士」と呼ぶ風潮が生まれたようです。また「ひとことこじつける人」という意味合いを、人名になぞらえて表現したともいわれます。
「一言居士」の使い方
このように「一言居士」は、本来は「いちいち口うるさく、何かといえば意見を言わずにはいられない、面倒くさい男性」といったように、ややネガティブな意味合いを持っている言葉だといえます。このため褒め言葉のように用いると、誤解を招く恐れもありますので注意が必要です。
かつてプロ野球の名選手だった野村克也氏が、自らを「生涯一捕手」とその一徹さを表現したことがありましたが、これに似たニュアンスのつもりで、「発言を曲げずに必ず実現する人」といった意味を込めて「彼の立派な一言居士ぶりは見上げたものだ」などと言うと、皮肉に受け取られ、失礼に当たるケースもあります。
ただ最近は「物怖じせずズバリ直言する」といった、前向きな意味で使われる場合もありますので、TPOや文脈によって使い分けたり理解することも大切でしょう。
「一言居士」の例文
- うちの父は一言居士なもので、どうにも口やかましくて困ったものだ。
- 彼は一言居士なところはあるが、言っていることは割ともっともだ。
- 先生は学会では一言居士として名を馳せた。お金や名声には関心のない清廉潔白な方だった。
- 山田君は一言居士な性格だから、納得がいかないと、下級生のときから監督や先輩に向かってズバズバ意見していたなあ。
「一言居士」の類語
- 一徹短慮(いってつたんりょ)…浅い考えなのにかたくなに思い込むこと。
- 頑固一徹(がんこいってつ)…非常に頑固なさま。
- 漱石枕流(そうせきちんりゅう)…「石に漱(くちすす)ぎ流れに枕す」のことで、非常に負け惜しみが強いことや、ひどく無理やりなこじつけのこと。
- 一家言(いっかげん)ある…ひとつの見識や独自の主張を持っていること。
- うるさ型(がた)…何にでも口を出したり、文句を言わずにはいられない人。
「一言居士」のまとめ
一口に「一言居士」といっても、人によってその人物に対する受け止め方はさまざまなようです。話の腰を折るように、他人の会話にいちいち口を挟むような「一言居士」は困りものですが、要所要所でしっかりと意見を述べ、その内容も的確であれば「しっかりした人」「ご意見番」として、周囲から認められ、重んじられることでしょう。つまるところ、発言というのはTPOや話す内容こそが重要だということかもしれません。