「年寄りの冷や水」の意味
老人に不相応な無茶なことや危ないことをしたり、差し出たふるまいをすることの例えとして使われることわざです。「冷や水」は辞書によっては「冷水」と書かれていますが、その場合もれいすいではなくひやみずと読みます。
「年寄りの冷や水」の使い方
「年寄りの冷や水」の使い方は二つあります。
- 老人が年齢にふさわしくないふるまいをした時に、それを冷やかしたり注意を与えたりする。
- 老人がそうした自らのふるまいを自嘲的に話す。
「年寄りの冷や水」の例文
「年寄りの冷や水」の例文を見てみましょう。
- 来年フルマラソンに挑戦したいって?年寄りの冷や水ですよ。やめた方がいい。
- 膝が痛いのに米を運んだらぎっくり腰になってしまった。年寄りの冷や水と言われそうだ。
- 昨日ボルダリングに挑戦したら、筋肉痛がひどい。年寄りの冷や水だったかな。
上の文は1の使い方、下の二文は2の使い方ですね。
「年寄りの冷や水」の語源
「お年寄りの冷たい水」とは一体どういうことなのか語源を見てみましょう。「冷や水」というのが一体何を指しているのか、というのは実は従来から議論となっていました。ここではそのうちいくつかの説をご紹介します。
生水を飲む
衛生管理が十分だとは言えない時代の冷たい水、すなわち生水は、あたることもありました。老人は体の衰えが始まっており、暑いからと言って生水をガブガブ飲むのは危険だからやめなさい、という説です。これが原義だと言われています。
冷や水を飲む
江戸時代後期の江戸市中では、夏になると冷たい湧水や氷室の氷などで冷やした水を桶に汲んで、甘味料や白玉を入れたものを「ひゃっこい、ひゃっこい」と言いながら売り歩くのが風物となっていました。老人がその冷や水を好んで飲んでお腹を壊すなどしたことから、冷や水を飲むな、という説です。
冷たい水を浴びる
血圧の事も考えずに、寒い中頭から水をかぶったりするなんて危ないからするな、という説です。以前は生水や冷や水などの飲み水説が主流だったのですが、昭和30年代、40年代頃からこの冷水浴説が出てきたと言われています。
江戸系いろはがるたの「年寄りの冷や水」
「年寄りの冷や水」は江戸系いろはがるたの「と」に採用されてきました。伝統的な図柄は、老人が冷たい水を飲む情景のものばかりで、冷水浴の図柄は全くありません。そこから考えると「年寄りの冷や水」ということわざの「冷や水」の語源は、飲み水説が有力なのかもしれませんね。
「年寄りの冷や水」の類語
- 年寄りの木登り
- 年寄りの力自慢
- 年寄りの夜歩き
夜歩きというのは、単に夜歩くということではなく、夜に遊郭などに行って遊び歩くことを言います。「年寄りの木登り」は具体的でイメージしやすくわかりやすいのではないでしょうか。
「年寄り」が含まれることわざ
「年寄り」が含まれることわざは他にも色々ありますので、いくつかご紹介します。
- 年寄り二階へ上がらず(老人は危険を伴うことは用心して避ける)
- 年寄りの物忘れ若い者の無分別(老人はよく物を忘れ、若い者は向こう見ずで、それが欠点だ)
- 年寄りと味噌は粗末にできぬ(年寄りの長い人生経験とそこから生まれた生活の知恵は尊く大切にしなければならない。同様に味噌の奥深い滋味も食生活に不可欠である)
「年寄りの冷や水」の英語表現
英語には以下のような慣用表現があります。
- An old sack asketh much patching.(古い袋はあちこちほころびを直す必要がある)
「年寄りの冷や水」まとめ
年をとっても新しい事に興味を持ったり、挑戦したりする気持ちは持ち続けていきたいものです。しかし危ない目にあっては元も子もありません。自らの体力などをしっかり把握し行動していきたいですね。