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「インセンティブ」とは
「インセンティブ」とは意欲を出させるための刺激のことです。外的動機付けとも言われます。人間は行動をしても何も得られないよりは、何かを得ようしたときのほうがより意欲や行動力を増すと考えられます。そのため「望ましい行動や結果に対して何かを与えることを約束する」ことは合理的に思えます。
ただしこれは必ずしも有効ではないことが分かっています。これは後半で紹介します。
ビジネス用語の「インセンティブ」
より狭い意味でのビジネス用語として、目標達成等のため会社が出す報奨金などを指します。例えば個人の営業成績により月給を変動させる制度などがあります。これは歩合給とも呼ばれます。
これはインセンティブを与えることによって、個人は報酬などを得るために通常よりも熱心に働き、結果を出そうとする考え方に基づいています。ただし以下のような点に注意が必要です。
「インセンティブ」は、それを与える単位(例えば個人やチーム)ごとには有効でも、個人間、チーム間の連携・協力が希薄になる可能性があります。例えば歩合給では、同僚に売上を取られないために、営業上で有利なノウハウを同僚に秘密にしておくなどといった行動につながる可能性があります。
「インセンティブ」の例
- テストで良い点をとったときに褒美を与えることを約束する。(勉強に対する動機付け)
- ポイントカードやセール情報で来店や買い物を促す。(購入に対する動機付け)
- イルカショーで成功したイルカに餌を与える。(イルカへの芸に対する動機付け)
- スマホアプリやメルマガでクーポンを配信する(閲覧や利用に対する動機付け)
「モチベーション」との違い
「モチベーション」は
- 物事を行うための動機を与えること、動機づけ
- 動機、やる気、意欲
という意味があります。
「1」は「インセンティブ」と似たほとんど同じ意味です。「モチベーションを与える」といった表現もあります。一方「2」は「インセンティブ」とは明確に異なります。外部から与えられるのではなく、その人の内部から生まれる動機や意欲だからです
「インセンティブ」は結果に悪影響を与える?
すでに「インセンティブ」を個人やチーム単位に設定する際に起こる連携・協力における問題点は記述しました。しかし「インセンティブ」は個人の行動結果にすら悪影響を与えるという指摘があります。
例えば、ダニエル・ピンクは生存に関わるような生来的なものを「モチベーション1.0」、「インセンティブ」によるモチベーションを「モチベーション2.0」、新しいモチベーションを「モチベーション3.0」と定義しました。「モチベーション2.0」の考え方で「インセンティブ」により外的動機付けを与え続けることは旧来の定型的なルーティンワークのような作業や業務では有効でも、創造性が要求される現代では効果が低いとしています。
そうではなく「モチベーション3.0」、つまり「創造したい、好きなことをしたい、より良くしたい、貢献したい」という内発的な動機付け、つまり「2」の意味のモチベーションにより行動を促す必要があると説きます。
ダニエル・ピンクの上記のTEDでの講演は、Youtube公式動画で750万回、TED公式サイトでは2,150万回以上再生されています。※2018年11月5日時点
「インセンティブ」が結果に悪影響を与える例
上記の講演でダニエル・ピンクが紹介している実験があります。ある創造力が必要な課題について、何のインセンティブも設定せず課題を与えたグループと、「インセンティブ」を与えたグループに分けます。さらに「インセンティブ」のグループには高い、中くらい、低いという「インセンティブ」の度合いを分けます。
すると、「インセンティブ」を与えたグループのほうが成績が悪く、さらに高い「インセンティブ」を与えるほど悪いという結果が得られていると言います。
「インセンティブ」まとめ
以上のように「インセンティブ」は以前に信じられていたほどの効果がなく、むしろ悪影響があることが分かっています。「インセンティブ」を設定する際は、それらに留意する必要がありそうです。