「えぐい」の意味と使い方
「えぐい」は本来、よくない意味を持っていましたが、現在ではよい意味でも使用が可能です。
- あくが強く喉を刺激するような味や感じがする。苦味・渋みなど総合的に嫌な味。
- 気が強い・思いやりがない。
- (よい意味で)すごい・かっこいい。
- (悪い意味で)見るに堪えないひどい様子、グロテスク、不気味。
1は味覚に関する表現で、ふきのとうなどのあくが強いものに対して使います。「えぐみがある」という言い方もします。辞書には2の意味が記載されていますが、現在この意味で使うことはまれでしょう。むしろ、俗語表現として3や4の意味で使われることが多いようです。
「えぐい」を使った例
「えぐい」の使用例を1の意味から順に紹介します。
- 用例1(喉を刺激するような味)
- 用例2(思いやりがない)
- 用例3(すごい)
- 用例4(ひどい)
「えぐい」を漢字で書くと…
実は、三通りありますが、難読漢字が並びます。
- 蘞い=蘞の音読みはレン・ケンで、植物のヤブガラシ(詳しくは後述)のことを指します。
- 醶い=醶の音読みはサン・カン・ゲンで、調味料の酢のことを指します。
- 刳い=刳の音読みはコで、えぐる(内をくり抜く)の意味です。
「えぐい」は一般的に平仮名か、「エグい」「エグイ」とカタカナで表記されますが、こうした難しい漢字を見ると、漢字表記が避けられるのもやむなしという印象を受けます。
「えぐい」の由来
口にすると刺激が強く、喉を「えぐ」るような感覚を覚えるといったところからきているようです。多くは山菜など、生でそのまま食べようとすると、大変な目に遭う食材のことです。ですから、味覚の情報をもとにした表現だと言えるでしょう。ですが、現在はどちらかと言うと、視覚の情報をもとにした表現へと変化しています。
ちなみに、「えげつない」という表現は、「えぐい」と近い関係にある言葉で、漢字では「蘞ない」と当てます。「言い方ややり方が露骨でひどい」という意味で使いますが、元々は関西の方言でした。現在のように一般化したのは戦後のことだと言われています。
「蘞い」植物・ヤブガラシ
「蘞い」の語源となった植物・ヤブガラシについて、詳しく解説します。ヤブガラシ(ビンボウカズラとも言います)はブドウ科の多年草で、つる性の雑草です。繁殖力が旺盛なため、これがからまると藪でも枯れるというところから「藪枯らし」の名がつき、非常にやっかいな害草だそうです。しかし一方、新芽をゆでてよく水にさらし、あく抜きをすると、和え物などにして食べることが可能となります。また、中国では烏歛苺(うれんぼ)の名で、薬用として用いられることもあるようです。
「えぐい」は流行語?
1980年代、風邪薬の『コンタック600』のTVCMで使われ、一時流行語となりました。理容師役の中原理恵さんが、風邪気味の客(伊武雅刀さん)に対し「すっごくえぐいんでないかい?」と言って、風邪薬を飲むように勧めるという内容でした。両者のセリフの間が絶妙で、評判となったCMです。「えぐい」が俗語化し、若者言葉として使われるようになるきっかけをつくったとも言えそうです。
「えぐい」の類語
味覚的な意味では「苦い」「渋い」「辛い」あたりが近いでしょう。出番は少ないですが「えがらっぽい(いがらっぽい)」という表現もあります。
また、俗語表現のよい方の意味の類語としては「すごい」「かっこいい」「やばい」「超」「半端ない」などが挙げられます。一方、悪い方の意味の類語は「グロい」「不快な」「後味が悪い」「やばい」「癖がある」「どぎつい」「気持ち悪い」などがあります。
ちなみに英語では「harsh」や「acrid」が「えぐい」に当たる表現です。