「ブラッシュアップ」とは?
いつの間にか、ビジネスシーンでよく耳にするようになった言葉です。会議や交渉の席でカタカナ語を交えると、新鮮でスマートな印象を与えるため、一気に広まり一般化しました。また、企業の名前の一部としてもよく使われています。
多くの人が「ブラッシュアップ」の持つ言葉のイメージを、非常によいものととらえているからだと思われます。では、本当の意味はどうなのでしょうか?
「brush up」の意味
英単語での綴りは「brush up」です。意味は以下の通りです。
1.物を手やブラシを使って、すっかりきれいにすること。
2.人が身づくろいをすること。
3.忘れていた外国語・知識などを磨き直す。復習すること。
基本的な動作イメージとしては、ブラシを使っていろいろなものをきれいにする、といった感じですから、歯磨きの際にも「brush up」と言うことがあります。
日本語化されたとき、「1.すっかりきれいにする」が「磨く」と翻訳され、意味も「よりよくする・洗練する」と変化していくことになります。
ちなみに「brush down」も英語ではほぼ同じ意味で「人や服のゴミを払い落とす」ことです。ですが、こちらは語感が悪かったせいか、日本人が外来語として使うことはありませんでした。
カタカナ語としての「ブラッシュアップ」の意味
最近の使われ方をみると、「ブラッシュアップ」は意味的に大きな飛躍を遂げ、以下のような意味が加わったことがわかります。
4.元のもの(考えやデザイン)を洗練し、さらによいものにしていくこと。
5.(技術などを)鍛え直して、より高みを目指すこと。
元々持っていた意味よりも、こちらの意味で使うケースがほとんどです。切磋琢磨して上を目指す、というポジティブな解釈が、上昇志向をアピールしたいビジネスの場で好まれる理由でしょう。
「ブラッシュアップ」の使い方
最近では、ビジネスシーンで特に好まれる言葉のうちの一つとなりました。企業ニュース系のメディアでは
非常に多く使われているので、例をあげてみましょう。
・過去作品のブラッシュアップと再演を目指す。(芸能)
・より深い味わいにブラッシュアップしました。(食品)
・デザインの細部について、ブラッシュアップを目指した。(工業製品)
・得意分野をブラッシュアップするような店舗戦略である。(商業)
・足し算・引き算を上手に使ってオフィスメイクをブラッシュアップ。(化粧品)
・小物を使ってコーディネートをブラッシュアップ!(アパレル)
・英会話力をブラッシュアップするためには、ネイティブスピーカーと話すことだ。(英語塾)
最後2つの例文(アパレル・英語塾)は、元の英語の意味「3.忘れていた外国語・知識などを磨き直す」を念頭に置いた場合、納得のいくものです。
企業名としての「ブラッシュアップ」
また、企業名に「ブラッシュアップ」「ブラッシュ・アップ」「Brushup」「Brush Up」「ブラッシュアップ〇〇」のように取り入れている例も多く見受けられます。業種は内装工事やリノベーションを請け負う建設業、ゲーム開発や動画共有アプリ開発を行うIT関連業、経営コンサルタントと職業紹介を行うサービス業、さらに印刷業、テレビ・CMなどの制作業とさまざまです。
「ブラッシュアップ」の語感の良さ
しかし、中には深い意味もなく「ブラッシュアップ」を使っているケースが見受けられます。テレビのニュース系ワイドショーの夕刊コーナーや、講習・講座・研修に「ブラッシュアップ」と銘打つ事例があります。「向上させる」という意味の「レベルアップ」「スキルアップ」と同義ととらえ、単に置き換えているだけです。
では、同義であれば、置き換えねばならない理由はどこにあるのでしょう。他の似た言葉と比べて、何かしら違った魅力があるからに他なりません。このような事態が起きるのも「ブラッシュアップ」という言葉が持つ語感のよさやポジティブイメージの力かもしれません。