「睨む」とは?
「睨む」は、(にら・む)と読みます。「睨む」は誰もが知っているであろう言葉の一つですが、意味を詳しくみていくと、多義的な動詞であることがわかります。意味は、下記の五つです。
- 目を怒らしてじっと見る。鋭い目つきで見つめる。
- 精神・注意力を集中し、視線を動かさずに見つめる。事態を注意してよく見る。
- 見当や目星を付ける。見込みを付ける。
- 要注意の人物、好ましくない人物として、とくに目を付ける。
- 前もって、先のことまで考慮に入れる。計算に入れる。
また、上記の一般的な「睨む」の意味とは別に、将棋の用語として、「角」駒の影響力を遠くから及ぼし、対局相手の駒組みを威圧したり牽制したりすることも「睨む」と表現します。
「睨む」の使い方
「睨む」という言葉の使い方は意味ごとにおおきく異なりますので、それぞれの項目に分けて後述していきます。
鋭い目の「睨む」
鋭い目で見つめる「睨む」は、厳しく、人の心を突き刺すような視線もしくは怒りをこめた視線であり、主体となる人の心に対象への批判や怒りの感情があることが前提です。睨みつける、じろりと睨む、などの言い回しも頻度高く用いられます。
「睨む」は、視線、目つきに怒りや批判を表し、その感情を対象に伝えようとする意志的、積極的な感情表現の場合が多々あります。したがって、文脈に「睨む」ゆえんの心情を合わせて表現することも多くみられます。
【文例】
- 上司の言動があまりに威圧的で怒りを覚えたが、睨むことでせめて抗議の気持ちを表した。
- 裕美さんは、「あなたは私を裏切った」と叫んで、恋人を睨みつけた。
注視の「睨む」
なにかを注視するさいの「睨む」は、物理的な「目」で見るというよりも、対象に精神を集中してその局面や状態を注意深く観察する、という意味において使われます。
したがって、「睨む」対象も、物理的ななにかというよりも、「状況」「情勢」「局面」「事態」などの概念が多くなります。
【例文】
- 契約するか否かは、もう少しA社の経済状況の推移を睨んでからとしよう。
- 敵対国の政情を睨み、隙があれば一挙に攻め込もうという結論に至った。
目星の「睨む」
目星の「睨む」は、実際に目で見ることとは関係なく、予想や見当をつけるという意味であるため、その基本的な対象は物体や人物ではなく状況になります。
たとえば、「彼が犯人だと睨んでいる」という文章においては「睨む」の対象は「犯人」ではなく、「彼が犯人」である「状態」を対象としての「睨む」(予想をつける)です。
【例文】
- 彼の引っ越し先は、その土地の好みからA町だと睨んでいたが、その通りだった。
- 友人が雲隠れしている場所は実家だと睨んでいる。
目をつける「睨む」
目をつける「睨む」は、実際の視線とは関係なく、要注意人物としてマークする、という意味で用います。どちらかといえば、「睨む」という言葉本来がもつ批判的な心情を含んで使うことがポイントです。
対象は原則として、ネガティブな要因をもつとみなされる人間です。明確な理由と共に使う場合と、漠然と(~に睨まれている)などのように使う場合があります。
【例文】
- 重大な事務上のミスを重ねて上司に睨まれているため、昇進はしばらく無理だろう。
- いったん監督に睨まれたら、たやすくはレギュラーメンバーになれないぞ。
計算にいれる「睨む」
計算にいれるという意味の「睨む」は、~を視野に入れて、~を予想して、などの言い回しと同様の使い方ができます。実際の視線とは無関係ですが、物事や状態をよく観察したうえですから、「睨む」の鋭く見つめるというニュアンスが反映されているといえましょう。
【例文】解散総選挙になることを睨み、議員たちはそれぞれ地元に帰って準備を始めだしたようだ。
「睨む」の類語
睥睨
睥睨(へいげい)とは、横目、流し目でじろりと対象を睨みつける、という実際の視線の意味と、そこから派生して、睨みつけるようにして勢いを示す、相手を威圧するように睨みを利かせる、という意味をもつ言葉です。
【例文】
- 映画で観た、敵を睥睨する武将の圧倒的な存在感が忘れられない。
- 役員会の冒頭、社長は居並ぶ役員たちを睥睨した。
ガンを付ける
ガンを付けるのガンは「眼」のカタカナ読みです。悪意をもって相手の目をじっと睨みつけることを意味します。ガンを飛ばすも同じ意味の言い回しです。基本的に、不良や態度のよくない人物の行為として表現されます。
【例文】お祭りでちょっと肩がぶつかった不良にガンを付けられ、走って逃げた。
目星を付ける
目星を付ける(めぼしをつける)とは、見当をつける、だいたいの見込みをたてる、目をつける、などの意味をもつ言い回しです。
【例文】発展しそうな駅周辺の土地に目星を付けてレストランを開いたが、大正解だった。