「これを期に」とは?意味や使い方を例文を含めてご紹介

「これを期に」の「期」は、「機」の字でもよく目にします。どちらの漢字を用いるのが正しいのでしょうか。ビジネスでも頻繁に使うことが多い言葉なので誤字には気をつけたいものです。今回は「これを期に」の漢字の正誤の解説にあわせ、この慣用句の意味と使い方をご紹介します。

目次

  1. 「これを期に」とは?
  2. 「これを機に」の使い方
  3. 「これを機に」と似た表現

「これを期に」とは?

「これを期に」「これを機に」も、よく目にする言葉ですが、実は「期」の表記は誤りです。これを機にとは、これ(この出来事、このタイミング、この機会、など)をきっかけとして、という意味の言い回しです。「機」は「機会」の略語として用いられています。

「機」と「期」の字義

「機」と「期」の字義を知ることによって、なぜ「これを期に」が誤りであるかがよくわかります。それぞれの字義を挙げてみましょう。

  • 「機」:多義的な字ですが、「これを機に」では、きざし・きっかけ・はずみ・しおどき、という意味で用いられています。同様の例では、好機・機会、などが挙げられます。
  • 「期」:①とき・おり・定められた時、②きめる・やくそくする、③ねがう・あてにする、④ひとめぐり、という字義を持ちます。

このように、「期」のどの字義を用いても、「これをきっかけとして」という意味にはならないことが分かります。

「この期におよんで」と「この機におよんで」

もうひとつ、「期」と「機」を混同しやすい言い回しがあります。「この期におよんで」と「この機におよんで」はどちらが正しいでしょうか?この場合は「期」が正解です

「この期におよんで」とは「いよいよ差し迫ったときになってまで」という意味で、「期」の字義①が用いられています。ですから、機会やきっかけを意味する「機」をもってくるのは誤りとなります。

なお、「この期におよんで」は<このにおよんで>と読みます。「機」は<ご>とは読みませんから、読み方を覚えておけば間違いも減るかもしれません。

「これを機に」の使い方

「これを機に」は、一見、「これをきっかけに転落の人生が始まった」というネガティブな表現にも使えそうですね。ところが、「これを機に」はポジティブな内容にしか使われません

この「機」を「好機」と理解すればわかりやすいでしょう。このきっかけを良きチャンスとしていこうというニュアンスを含むことが、「これを機に」の使い方の大きなポイントです。それだけに、「これを機に」はビジネスの交渉の場などもでよく使われます。

「これを機に」のビジネスシーンの文例

(営業担当社者A)

このたび、当社のプリンターはインク充填方式を全面改良いたしました。これを機に、旧型からのお買い換えをご検討頂けませんでしょうか。

(イベンターB子)

当イベントへのご参加、まことにありがとうございます。これを機に次回のご出展もお考え頂けますのなら、様々なご優待も準備致します。

「これを機に」の日常的なシーンの文例

(父親C)

首席での大学卒業おめでとう。おまえも、これを機に、誇りをもって最高の人生を目指してごらん。

(新入社員D子)

配属された部署が一番避けたかった営業だったけれど、これを機に苦手意識というものを克服するわ。

「これを機に」と似た表現

好機と捉える

「好機と捉える(こうきととらえる)」は、物事をするのにまたとないよいタイミング、ちょうどよい機会だと考える、という意味です。「これを機に」よりも、さらにポジティブなニュアンスが強まる言い回しといえましょう。

【文例】

  • 地方の支店勤務が続いたが、東京本店に戻ることになった。これを好機ととらえ、仕事も生活もいっそうの充実を目指していこう。
  • どんな人生の変化も、それを好機ととらえるか否かで、結果は大きく異なってくる。

心機一転

「心機一転(しんきいってん)」とは、何かのできごとをきっかけにして心もちがすっかり変わること、ある動機により決然として気持ちを変えることを意味する四文字熟語です。

この言葉も「これを機に」と同様、ポジティブな意味にしか用いません。「これを機に」は、きっかけを得て何をするかというところに重点が置かれた表現ですが、「心機一転」は、良い方向へと向かう心の切り替えや変化自体に焦点があります。

【文例】

  • 結婚して心機一転、仕事にも生活にも充実したエネルギーで臨める日々となった。
  • 彼は変化を好むタイプではなかったが、心機一転するつもりで旅に出た。

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