「侘しい」とは?
「侘しい」は、「わびしい」と読みます。シク活用の形容詞「侘し」を語源に持つ形容詞で、以下のような意味を持つ言葉です。
- とてももの静かでさびしい。
- 心細く、心が慰められない様子。
- 貧しくてあわれな様子。みすぼらしい。
- つらく悲しい。やるせない。
- 当惑するさま。やりきれない。
- 興ざめである。おもしろくない。
4~6の意味での用法は、主に古文で見られるもので、現代文においてこれらの意味で「侘しい」が使われることはほぼありません。
「侘しい」の使い方
- 人里離れた侘しい田舎町に、一人の青年が降り立つところからこの物語は始まる。
- 進学のために上京したが、友人や恋人もできず、毎日電気の消えたアパートに帰っては、一人侘しく夕食を取る生活だ。
- 一代で財をなした、立志伝中の人物の終の棲家(ついのすみか=晩年を過ごす家)としては、ずいぶんと侘しい小屋だ。
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ただ、日の経ぬる数を、今日幾日、二十日、三十日とかぞふれば、指もそこなはれぬべし。いとわびし。((船の出せないままに過ぎていく日々を、「今日は何日目だ」「二十日目」「三十日目だ」と数えているので、指が痛みそうだ。なんともやりきれない)『土佐日記』より
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あなわびし、人の有りける所をと思ふに(あらあら、人が住んでいたのねと思い)『今昔物語』より
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前栽の草木まで心のままならず作りなせなるは、見る目も苦しく、いとわびし。(庭の植木にいたるまで、自然のままにせず手を加えているのは、見苦しく、興ざめなものです)『徒然草』より
それぞれの例文の番号は、前段『「侘しい」とは?』で紹介した意味の番号に対応しています。5の「当惑」は少々毛色が違いますが、基本的には「ものがなしい、さびしい」ニュアンスを含んだ言葉が「侘しい」です。
「侘しい」の類語
「侘しい」の類語としては、「寂しい(さびしい)」が挙げられます。どちらも「心が満たされず、物足りない」という意味を含む言葉です。
「寂しい」とは?
「寂しい」は、シク活用の形容詞です。「さぶし」のイ音便で、動詞「寂(さ)びる」に対応する形容詞であり、以下のような意味を持ちます。
- 心が満たされず、物足りない気持ちである。
- 仲間や相手になる人がいなくて心細い。
- 人の気配がなくて、ひっそりとしている。
「寂しい」を使った例文
- いつも明るい彼女が、別れ際にふと見せた寂しげな顔つきが、いつまでも胸に残っていた。
- 妻に先立たれた彼は、一人寂しく暮らしていた。
- 古臭いかも知れないが、女性が寂しい夜道を一人で歩くのには、やはり賛成できない。
「侘しい」と「寂しい」の違い
「孤独を感じる」あるいは「人気(ひとけ)がなく、賑やかでない」という意味では、「侘しい」も「寂しい」も使うことができます。「侘しい一人住まい」、「寂しい一人住まい」はどちらもほぼ同じ意味ですね。
しかし、「口が寂しい」とは言いますが、「口が侘しい」とは言いません。「うらぶれて侘しい身なり」という表現はありますが、「うらぶれて寂しい身なり」は一般的とは言えない表現です。
「侘しい」と「寂しい」の違いは、「形容する対象」で考えるのがよいでしょう。一般的には、「侘しい」はものの様子を、「寂しい」は人の気持ちを表すのに用いられることが多い言葉です。
また、「侘しい」は「趣がある」というプラスのニュアンスを含むことも多々ありますが、「わびさび(侘び寂び)」という用法を除いては、「寂しい」という言葉にプラスのニュアンスが含まれることはありません。