「得心がいく」とは?
「得心がいく」(とくしんがいく)は、物事の事情やいきさつなどがよく理解できた、承知したことをいう言い回しです。
「得心」はよく分かって承知できる、もしくは、説明などを心から受け入れられるということ。「いく」は漢字で「行く」で、この場合は、気持ちが十分満足することです。
「得心がいく」の使い方
「得心がいく」という言い回しは、かねてからどうしても解けなかった問題、疑問に思っていたこと、真実を知りたくてもうやむやにされて分からなかった物事などに対して、説明を受けて納得するだけでなく、理解できて気持ちがスッキリする時に使われる場合が多いです。
逆に「得心がいかない」と打ち消しの助動詞「ない」がついた場合、詳しいことが全く分からず疑わしい、ごまかされているようで納得できずスッキリしないといった、理解できず強い不満を抱いているさまを表せます。
「得心がいく」の文例
- 彼が国の代表に選ばれた理由が分かって、得心がいったよ。
- 得心がいく詳細な説明を受けたおかげで、その後の流れを十分に理解できた。
- 彼女の得心がいくように、一緒に写真に写っている女性は会社の同僚で浮気相手ではないことを理路整然と釈明した。
- Aさんが舞台の主役をやるのは得心がいかない。絶対Bさんだと思ったのに。
- 「何でサンタさんは私の欲しい物を知っているの?」説明しても、うちの子供は得心がいかないようだ。
「得心がいく」と似ている言い回し
目から鱗が落ちる
「目から鱗が落ちる」(めからうろこがおちる:略称「目からウロコ」)とは、何かのきっかけで急に、それまでさっぱり分からなかったことが理解できるようになることを表す言い回しです。「得心がいく」と似ていますが、すっきりした気持ちになったのかまでは言及しません。
【例文】
- 先生に質問したおかげで難しい問題が解けた。まるで目から鱗が落ちたようだった。
- 今までと違う側面に焦点を当てたドキュメンタリーを見て、目からウロコだった。
ちなみに、「目から鱗が落ちる」という表現は聖書から由来しています。ある時、キリスト教を迫害していたサウロという人物の目が見えなくなりました。
それを知ったキリストが「助けるように」と指示を出し、信者が手をかざすと目が見えるようになりました。その時にサウロが言った言葉からできました。
【『新約聖書』使徒行伝」より】
「The scales fall from one's eyes」(訳:両目から鱗のような物が落ちた)
合点がいく
「合点がいく」(がてんがいく)とは、事情を理解する、納得する、承知することを表す言い回しです。「合点」は「がってん」が変化した形で、もともとは「同意する」「頷く(うなづ-く)」ことで、派生して理解や納得という意味で使われるようになりました。
ただし、多くの場合「合点がいかない」と否定する形で使われることが多く、全然納得ができない、全く理解できずに受け入れられないといった心情を表します。分からずに不満に思っている点で、「得心がいかない」と同じように使えます。
【例文】
- どんなに説明されても、おかしいよ。全然、合点がいかないね!
- ランキングサイトで上位に来てた人気店って本当?雰囲気も味も、合点がいかない。
氷解する
「氷解する」(ひょうかいする)は、常々疑わしいと感じていたことが跡形もなく無くなることです。少し意味合いが違うかもしれませんが、納得できる説明があって疑念が晴れた場合に「得心がいく」で言い換えができますね。
【例文】
- アリバイを証明できたことで、探偵の疑念が氷解したらしい。
- 会社の悪い噂を言いふらした犯人は彼ではないかと思っていたが、その疑いは氷解した。
「氷解する」は文字通り「氷が解ける」と水になり、蒸発して何も残らなくなるところから来ています。しかし、気温が上がって海や湖などの水面の氷が解けることや、解けた氷については「解氷」といいます。漢字の順番が逆になりますので注意しましょう。