「心なしか」とは?
「心なしか」(こころなしか)という表現は、しばしば見聞きすることがあるかもしれません。「か」を除いて、「心なし」と副詞的に用いることもありますが、一般的ではありません。
漢字で表記する場合は、「心倣しか」と書きます。「心無しか」と誤解されがちですが、こちらの場合「思いやりがない、狭量だ」と違う意味で受け取られる可能性がありますので、注意しましょう。
「心なしか」は、端的にいえば、気のせいか、どことなく、という意味の言葉です。そのように感じられるけれど、私の気のせいかも、くらいのニュアンスです。
客観的な事実に基づいたものではなく、主観的に感じること、それも、なんとなく、といったレベルを表現しています。
「心なしか」の使い方
「心なしか」は、発信側の主観、推測を表す言葉ですので、使い方のポイントは文章の末尾にあります。「心なしか」と始めた場合、「~のように感じる」「~気味に思える」「~そうに見える」という言葉で結ぶのが一般的です。
あるいは、「心なしか」+「~のようだ」「~気味だ」「~そうだ」でもよいでしょう。とはいえ、会話では上記のような言葉は省略され、「心なしか痩せた」「心なしか少ない」「心なしか冷淡だ」などと表現することのほうが多いかもしれません。
また、あくまで主観的に、かすかに感じる程度の内容に対して使います。たとえば、「彼女は心なしか真っ青だ」「彼は心なしか20kgは太った」などの表現は不適切ですね。このように、誰の目にもその様子が明らかな状態には用いません。
「彼女は心なしか青ざめてみえる」「彼は心なしか太ったようだ」であれば、「気のせいかもしれないが、そのように感じられる」という意味で使うことができます。
「心なしか」の文例
- 真由美さんは、心なしか苛立っているように見える。
- このスープの味付けは、塩分が心なしか足りなく感じる。
- 健一君は、心なしか太ったね。
- 心なしか、涼子さんの笑顔が淋し気に感じられた。
- 断捨離をしたことで、心なしか失恋から立ち直るのも早そうな気がする。
「心なしか」の類語
「そこはかとなく」の意味と使い方
「そこはかとなく」は、古語「そこはかとなし」から派生した形容詞「そこはかとない」の連用形です。
平たく言えば、なんとなく、どことなくという意味を表します。理由や根拠が明確にあるものではないが、なんとなくそのような雰囲気が感じられる、といったニュアンスですね。客観的な要素を踏まえて使われる場合もあります。
「太った、痩せた」「臭い」などストレートな表現には使わない傾向にあります。感覚、感情、気配など、抽象的、あるいは曖昧さのあるものに対して使うことが多いでしょう。
【文例】
- そこはかとなく、あたりには甘い香りが漂っていた。
- 由里さんは、そこはかとなく悲しみを浮かべた表情でひとりお酒を飲んでいた。
「どことなく」の意味と使い方
「どことなく」は、漢字では(何処となく)と表記します。どこがとははっきり言えないがなんとなく、そういった印象を感じるさま、を表します。「心なしか」とほぼ同じ意味で用いることができますが、視覚的に得た情報に対して使うことが多いでしょう。
【文例】
- 血がつながっていないのに、私と母はどことなく顔が似ている。
- この街は、どことなくパリのような趣きを感じさせる。