「棚に上げて」とは
「棚に上げて」とは、「棚に上げる」が変化した言葉で、「上げて」は「上げる」の連用形「上げ」に、接続助詞「て」が付いた形です。
「棚に上げる」とは、「都合の悪いことには触れずにいること。知らん顔をしてほっておくこと」を意味する慣用句です。由来は「棚の上に上げて片付けておく」ことから来ていると言われています。
「棚上げ」とは
「棚に上げて/棚に上げる」と似た言葉に、「棚上げ」があります。意味は以下の3つです。
- 商品などの需給調整のために、一時的に商品を貯えておいて市場(しじょう)に出さないこと。
- 問題の解決を一時保留にして、先延ばしにすること。
- 形式上は敬意を払いつつ、実質的に無視すること。
上記2が「棚に上げて/棚に上げる」と同じ意味ですが、1の意味は若干異なるため、文脈を考えて使う必要があります。例えば、「問題を棚上げする」場合は2の意味ですが、「商品を棚上げする」場合は、1の意味ですね。
また、3の意味では、「上司を棚上げして、部下だけでプロジェクトを進める」などのように使うことができますが、あまり一般的ではないでしょう。
「棚に上げて(棚に上げる)」の使い方
「棚に上げて/棚に上げる」は、もっぱら、「Aを棚に上げて、B~」という形で、一方の(不都合な)ことには触れずに、他方について言及する時に使われます。
例文
- 彼は自分のミスを棚に上げて、後輩の小さな失敗をしつこく責めている。
- メディアは、プライバシーを侵害するような報道で多くの人が傷ついていることを棚に上げて、「知る権利」を振りかざしている。
- 家事や育児を奥さんに任せきりなのを棚に上げて、それらしいコメントをする教育評論家なんてなぁ。
- 人生をやり直すには、過去の失敗を棚に上げておくことはできない。
- かつての食糧政策の失敗を棚に上げて、食糧自給率の低さを嘆いているだけではだめだ。
「棚に上げて(棚に上げる)」の類語
「放置する」
「放置する」とは、「(何らかの手当や対策を取らなければいけない物事を)ほったらかしにすること。手を付けずにおいておくこと」です。こちらは、「Aを棚に上げて、B~」のように、「A」のあるなしは問いません。
【例文】
- 駅前の不法駐輪自転車の問題を放置していたら、美観を損ねるので対策してほしいと市民から抗議があった。
- 大臣のスキャンダルで審議が止まってしまったため、重要な法案の審議が放置され、審議未了で廃案になってしまった。
「留保する/保留する」
「留保(りゅうほ)する/保留(ほりゅう)する」とは、「すぐに手を付けずに、そのまましばらく置いておくこと。現状のままにしておくこと。未解決のままにしておくこと」です。カタカナ語では「ペンディング(pending)」とも言います。
これらの言葉も、「Aを棚に上げて、B~」の「A」のあるなしに関係なく、事案をほったらかしにするような時に使いますが、時期が来たら対処するという含みがあります。
【例文】
- 彼女は、彼のプロポーズに対する返事を留保した。
- 美術館の命名権を販売する案は、反対意見が多いため留保された。
- その案件はしばらく保留して、最初にこの案件に取り掛かろう。
- 彼は、A案とB案のどちらを選択するか態度を保留した。
「無視する」
「無視する」とは、「人やモノの存在意義や存在価値を認めないこと。存在そのものを認めないこと」を意味します。人に対して「無視する」行為は、いじめやハラスメントの対象にもなります。
「棚に上げて/棚に上げる」の「知らん顔をする」とか「ほっておく」というよりも程度が甚だしく、横暴な態度と言えるでしょう。
【例文】
- 赤信号を無視して交通事故を起こしたのだから、厳罰にすべきだ。
- 彼は、業務命令を無視して仕事をしなかったので懲戒処分を受けた。