「切々と」とは?
「切々と」は、(せつせつと)と読みます。文章のみならず、日常会話でも比較的使われることがありますが、詳しく説明をするとなると難しい言葉のひとつではないでしょうか。
「切々と」は、①相手の心に訴え、その心を動かすほどに思いをこめて、真に迫るほどに熱心に、②音や声が、しみじみと淋しげに心に響いてなどの意味を持つ言葉です。
「切々」の意味
「切々と」は、「切々」のタリ活用の連用形ですが、その意味をさらに深く理解するために、その根幹となる「切々」を見てみます。「切々」は、文語のタリ活用とナリ活用の二種類を持つ形容動詞です。
大きく分けて、①他者の心に強く訴えるさま。思いが胸に迫るほど、心がこもっているさま、②音や声が、しみじみと淋しげに他者の心を打つさまの二つの意味を持ちます。
「切々と」の使い方
「切々と」は、他者の心を動かすほどの力を含む言葉ですが、「切々」には「しみじみと」「淋しげに」という意味があります。
したがって、「切々と」は、「単なる力強さというのではなく、しみじみと胸を打つようなひたむきさ、真剣さ」という意味での「強さ」を表現します。このニュアンスの違いは難しいのですが、一例を挙げてみます。
人によって、とらえ方の違いはありますが、例えば「声を荒げ、怒りに顔を赤らめつつ切々と無実を主張した」という表現よりは、「震える声で、恐怖に青ざめつつ切々と無実を主張した」のほうが、「切々と」を用いるのにふさわしい心情と言えるのではないでしょうか。
「切々と」の文例
- 恵美さんは、双子の育児の大変さを夫に切々と訴え、ついに育児休暇を取得させた。
- 学校をさぼって遊んでばかりいる山田君に、担任は学ぶことの大切さを切々と説いた。
- 絶望のさなかにある時に耳にした『G線上のアリア』は切々と心に響き、癒しとなった。
「切々と」の類語
「切に」の意味と使い方
「切に」(せつに)は、「心に強く思って。どうしてもというひたすらな思いで。心から」などの意味を持つ副詞です。
「切々と」と異なる点は、「しみじみと切なげに」というような悲壮感は感じられず、「心底から」という強い思いが前面に出ているところです。
【文例】
A高校の野球部は、甲子園初出場をかけた試合に勝利することを切に願い、部員全員で神社に参拝した。
「痛切に」の意味と使い方
「痛切に」(つうせつに)は、「身にしみて強く」という意味を表す言葉です。頻度の高い使い方は、「痛切に感じる」「痛切に思い知る」などです。
「痛」という言葉があるように、自らの身に痛いほどに染みるというニュアンスが強い言葉です。したがって、「切々と」「切に」などのように、相手に対して強く訴える時に使うのではなく、自分自身が強くなにかを実感するおりに使います。
【文例】
- 泣いている母親を見て、自分が言い放ったことでどれほど傷つけたかを痛切に感じた。
- 受験した大学をすべて不合格となり、不勉強だったことを痛切に思い知った。
「切実に」の意味と使い方
「切実に」(せつじつに)とは、おもに①心に強く深く感じて、身に染みて感じて②直接かかわりがあり、重要でなどの意味を持ちます。
頻度の高い使い方は、「切実に願う」「切実に思う」「切実に感じる」「切実に訴える」などです。
【文例】
- ピアニストの由美さんは、ショパンコンクールで優勝することを切実に願っていた。
- 社長は、赤字がこれ以上続くと会社の存亡にかかわると、社員に切実に危機を訴えた。