「平静を装う」とは
「平静を装う」とは、「内心は緊張や動揺しているが、それを外面に出さないように表面的には冷静さを保っているさま。何事もなかったかのように振る舞うさま」を表現する言葉です。
「平静を装う」さまとは、本人が感情的な乱れを抑制して、周囲の人に気づかれていないと思って対応している状態です。日本には、本音と建前の文化がありますが、日本人は特に建前を重んじる傾向があるので、どんな時でも平静を装うことがうまいようです。
「平静」とは
「平静」には、次のような意味があります。
- 世の中が落ち着いて静かなこと。また、そのさま。
- 気持ちや態度が落ち着いていること。また、そのさま。
【例文】
- 昨夜の暴動が嘘の様に、街は平静そのものだ。
- 彼は平静さを取り戻した。
- 母の交通事故の知らせに、平静な気持ちではいられなかった。
「装う」とは
「装う」には、次のような意味があります。
- 飾りをととのえる。容儀(礼儀作法にかなった身のこなし。また、その姿)をととのえる。正装する。
- 支度をする。準備をする。
- 実際はそうではないのに、如何にもそうであるかのように見せかける。ふりをする。
【例文】
- パーティーに行くためタキシードを装う。
- 釣り竿の針に餌を装う。
- 金融機関を装う偽メールに注意しましょう。
「平静を装う」の使い方
【例文】
- 彼は、努めて平静を装うようにしていたが、周りにはバレバレで気の毒なほどだった。
- 学校の研究発表では平静を装っていたが、自分でもわかるほど声が上ずっていた。
- 彼女は緊張しやすい性格なので、急な物事には呼吸を整え平静を装うように努めている。
- 接客業は、いつでも平静を装うことができる精神力が必要だ。
- 目を覆うような悲惨な現場でも、鑑識職員は平静を装って検証することが仕事だ。
「平静を装う」の類語・関連語
「冷静を装う」
「冷静を装う(れいせいをよそおう)」は、「内心は動揺しているのにそれを表に出さないよう努めること」という意味があります。
「平静を装う」と同じような意味で使われますが、使う対象が少し違います。「平静」は、人と人以外の物事に使用しますが、「冷静」は、人の感情に関することのみに使用されます。
【例文】
- どの様な場面でも冷静を装うことが、勝負に勝つ秘訣だ。
- 冷静を装う彼の目に一瞬、怒りの感情が見て取れた。
「そぶりも見せない(素振りも見せない)」
「そぶりも見せない」とは、「心に思っていることを人に悟られない様に振る舞うさま」を表現する慣用句です。「そぶり(素振り)」には、「表情や動作に現れた様子。気配(けはい)」という意味があります。
【例文】
- 彼の行動を監視していたが、怪しいそぶりは見せなかった。
- 彼らは、自分たちの考えを少しも口にせず、そのそぶりさえも見せない。
「何食わぬ顔」
「何食わぬ顔(なにくわぬかお)」とは、「自分は何も知らない、関係ないという顔つき。そのように振る舞うさま」を表現する慣用句で、「実際にはつまみ食いしたのに、食べていないような顔をする」というのが語源です。
【例文】
- 何食わぬ顔で嘘をつく彼は、誰にも信用されていない。
- 彼らの悪だくみを暴く為、何食わぬ顔で探りを入れてみた。
「素知らぬ顔」
「素知らぬ顔」とは、「本当は知っているが、自分は知らないという顔つき。そのように振る舞うさま」を表現する慣用句です。
【例文】
- 彼は、大声で通りの反対側から声を掛けたが、彼女は素知らぬ顔で通り過ぎた。
- 気付いたのか気付かないのか、素知らぬ顔をしているのか、私には判断しようがない。
「ポーカーフェイス」
「ポーカーフェイス(Poker Face)」は、一般的に使われている言葉なので、ご存知の方は多いでしょう。どんな時でも表情が変わらない人やクールな人に使う言葉です。
トランプゲームのポーカーは、相手との心理戦がメインになるゲームです。「ポーカーフェイス」は、相手に自分の手の内を悟られない為に、自分の感情が表情に出ないよう意識的に行うものです。「平静を装う」と共通するものがあります。
【例文】
- 彼はいつでもポーカーフェイスを崩さないので、何を考えているか分からない。
- 子供の様に明るい性格の人が、ポーカーフェイスを装っても長続きはしない。