「提灯持ち」の意味とは
「提灯持ち」(ちょうちんもち)は、力のある人に媚びへつらい、表向きは褒めて調子よく宣伝して回る様子を表す言い回しです。「提灯を持つ」という慣用句も同じ意味です。
「提灯持ち」の由来
元々「提灯持ち」は、職務を表す言葉です。昔は現在のように電気がなく街灯もありません。夜道を歩く時には真っ暗で前が見えない状態です。そのため、提灯を下げて主人の前を歩き足元を明るくする役目が必要でした。
現代では、「提灯持ち」を役目の意味で使うことはめったにありませんが、提灯持ちの様子から、上記のようなネガティブな意味に転じてしまいました。
「提灯持ち」の使い方
「提灯持ち」の「相手よりも下手に出る形で媚びる様子」や「あたりの良い褒め言葉のみを言う様子」から、「提灯持ち」の行動をする人を嘲って(あざけって)言う時に使われます。
自分の利益のためにへつらう
「提灯持ち」は、仕事や生活の面で、自分の利益となりそうな場合に媚びへつらう様子を表すのにも使えます。本音はともかく、打算的に口先だけ褒めそやしている様子が垣間見えるでしょう。
【例文】
Aさんは、一緒にのさばっていられるからか、提灯持ちをしてみんなが引くくらい部長を褒めちぎっているらしいよ。
権力者のご機嫌取り
仕事をする上で有利になるよう、組織や集団の中で権力を持っている人へご機嫌取りをする様子を「提灯持ち」という語で表せます。間違ったことを強引に進めても常に肯定する「イエスマン」のような人が挙げられます。
【例文】
「Bさん、地域の大立者の提灯持ちは大変だね!」と嫌味を言ってやった。
必要以上に評価を上げて宣伝
ある商品や芸能人などを、必要以上に高く評価した記事を書いて良いように宣伝することも「提灯持ち」に当たります。このような本来の価値や実力以上にヨイショする記事のことを「提灯記事」とも呼びます。
企業や団体から依頼され、人物が注目されたり、商品が売れるように仕向ける「ステルスマーケティング(略称:ステマ)」という手法もあります。売り出そうとする役者や製品などのことを、不自然なほど高く評価する記事、広告、ブログ、レビューなどの方法があります。
【例文】
雑誌に芸能人のCが多くの女子高生から人気とあるが、所属事務所の提灯持ちだね。
「提灯持ち」の類語
「提灯持ち」と同じように昔ながらの職業(職種)から由来して、「へつらう」ようなネガティブな意味に変化した類語を紹介します。
太鼓持ち・幇間
「太鼓持ち」(たいこもち)・「幇間」(ほうかん)は、相手の機嫌を損ねないように一生懸命になってへつらう人を蔑む(さげすむ)ような気持ちを込めて表す言葉です。
「太鼓持ち」も「幇間」も、滑稽な言葉や仕草で酒席の客の機嫌を取ったり、芸者や舞妓の間に立ってお座敷で芸を披露して場を盛り上げるなどの重要な役目を持っています。
「幇間」が正式名称ですが、太鼓の演奏で場を盛り上げたことから「太鼓持ち」とも言われるようになりました。「提灯持ち」と異なり、「太鼓持ち」や「幇間」には、良いことを言って宣伝する意味は含まれていません。
【例文】
- 長所なんて感じられない人のことも必死で持ち上げて、太鼓持ちも大変だな。
- 上司を尊敬していると言ったら、「まるで幇間だな」と同僚にバカにされた。
茶坊主・お茶坊主
「茶坊主」(ちゃぼうず:「お茶坊主」とも言う)とは、権力者におもねっている者を指し、陰口を言う時に使われる言葉です。相手にへつらう意味では同じですが、「提灯持ち」のように良いことだけを宣伝する意味はありません。
本来「茶坊主」は、室町時代から江戸時代にかけての武家の職業名で、「茶道坊主」「数寄屋(すきや)坊主」などとも呼ばれていました。武家の城や邸宅で茶道関連のしきたりや来客の接待などを司り、頭を丸めて僧形にしていたことから「茶坊主」と言われました。
しかし、茶坊主の中には主君の権力を笠に着て横暴な振る舞いをし、家臣から嫌われる人も多く、そこから、現在ではネガティブな意味だけが残っています。
【例文】
社長にはペコペコし、部下には「お前のことを言いつけてやる」と怒鳴りつけて、専務はまるで茶坊主だね。