「竦然」とは
「竦然(しょうぜん)」には、「恐れてぞっとするさま、身がすくむさま」という意味があります。「何か恐ろしい体験をして、ぞっとした。体が恐怖のあまり硬直して動けなかった」というような状態を表現する時に使用される言葉です。
「竦然」は、「悚然」とも表記されます。どちらも日常的に使われる言葉では無く、古典などの文章中に使われているのが主です。
「竦然」の「竦」
「竦」は、音読で「しょう」、訓読で「つつし-む/おそ-れる/すく-む/そび-える/つま-たつ」と読み、「身を引き締めて立つ」という意味を表現しています。
主な使われ方は「竦(すく)む」ですが、古典などでは以下のような熟語として使われています。
- 竦企(しょうき):足のつま先を立てのびあがるようにして待ち望むこと。
- 竦懼(しょうく):恐れおののく。身が震える。
- 竦動(しょうどう):つつしむ。かしこまる。
「悚然」の「悚」
「悚」は、音読みで「しょう」、訓読みで「おそ-れる」と読み、「恐れてすくむ」いう意味を表現しています。他に「悄」を使う熟語の例として、主に古典で「悚懼(しょうく)」「悚慄(しょうりつ)」などがありますが、どちらも「恐れおののく」という意味です。
「然」
「然」は、音読みで「ぜん/ねん」、訓読みで「しかり/しか/も-える」と読み、以下のような使い方と意味があります。なお、「もえる」という意味では、現在、「燃」がもっぱら使われますが、「然」は「燃」の基になった漢字です。
それぞれの読み方別に使用法や例を紹介します。
- (ぜん/ねん):形容する語に付けて、その物事の状態を表現する接尾語として使用する。
- (しかり):「そうである」という意味を持ち、上の文を受け、その物事を認定したり、展開したりする。
- (しかして/しからば/しかれども):「そして/そうであるならば/そうであるが」の意味を持ち、接続(順/逆)の助詞として使用する。
【使用例:上記の番号に対応】
- 「突然」「公然」「毅然」「忽然」「断然」「歴然」「平然」など。
- 「武道には強靭な肉体が必要だが、精神力もまた然(しか)り」「~だが逆もまた然(しか)り」
- 「地震により街は全て崩壊した。然(しか)して後、5年をかけて復興を果たした」「彼は、この事件の犯人ではない。然(しか)らば真犯人は誰なのか」「彼は、車が大破するほどの大事故を起こした。然(しか)れども、命に別状はなかった」
「竦然」の使用例
- 北海道の山中で道に迷ってヒグマにでも遭遇したなら、竦然としてしまうだろう。
- 自殺の名所と云われる断崖絶壁の上から見下ろした時、竦然としてしまった。
- あの廃病院には、竦然とするには十分すぎる異様な雰囲気がある。
「竦然」の類義語
「慄然」
「慄然(りつぜん)」とは、「恐れ震えるさま。恐ろしさにぞっとするさま」という意味を表現する言葉です。「慄」には「恐れ震える」という意味があります。
- 目の前で起こった通り魔事件を目撃した時、慄然として手足がすくんだ。
- 現代社会では、慄然とする事件が次々と起こる。
「戦慄」
「戦慄(せんりつ)」は、「恐れ震えること。恐れて身震いするさま」という意味を表現する言葉です。「戦」も「慄」も共に「おののく」と読み、「恐れ震える」という意味があります。
- 暗闇から聞こえる異様な唸り声に、戦慄が走る。
- 彼の体験談は、聞いているだけで戦慄する。
「恐怖」
「恐怖(きょうふ)」は、「恐れること。恐ろしく感じること」という意味を表現する言葉です。
- 人は、他人の死体を見た時、自分の死を感じ恐怖を抱くことがあるそうだ。
- 人が恐怖を感じる1つの定義として「未知の物事」ということが挙げられる。
「竦然/悚然」と同様の意味を持つ表現
【恐怖に震えたり悪寒を感じたりするさまの表現】
震えあがる・身の毛がよだつ・怖じ気づく・鳥はだが立つ・縮みあがる・血の気が引く・冷汗が出る・背筋が凍りつく、など
【恐ろしい物事に遭遇して恐怖する様の表現】
恐怖を感じる・背筋が寒くなる・冷たいものが走る・戦慄が走る・足が竦む・恐怖で立ちすくむ・青ざめる・顔面蒼白になる、など