「異口同音」の意味
「異口同音」の意味には、以下の2つがあります。
- 多くの人が揃って同じことを言う
- 1から転じて、その場にいる多くの人が同じ意見を言う、大勢が賛成すること
「異口」はさまざまな人の口を指し、「同音」でそれぞれの人が同じことを揃って話すことを表しています。
「いくどうおん」とも「いこうどうおん」とも読むことができますが、「いくどうおん」という読み方が一般的です。
「異口同音」の使い方
「異口同音」は、現代では上記2の「多数が同じ意見である」という意味の使い方がほとんどです。上記1の「揃って同じことを言う」は、場面が限られます。
1揃って同じことを言う
「異口同音」は、参加している人全員で同じ言葉を話す際に使われます。代表者の掛け声にならって、他の参加者が同じ言葉を繰り返す場合に用いられることもあります。
例えば、英会話などの講座に参加している場合に正しい発音を身につけるため、他の受講生と一緒に講師の読み上げた例文を繰り返して発声することがありますね。その様子も「異口同音」と表すことができます。
【例文】
- 先生に従い、他の受講生と一緒に異口同音に英文を読み上げた。
- 法事で配られた経本を見ながら、他の参列者と異口同音にお経を詠んだ。
2多数が同じ意見である
「異口同音」は、異なる口がそれぞれ同じ音を発するところから、同じ意見を言う人が多い、ある意見に賛同、または反対する人が大勢いる場合に使用されます。
意見が揃っていることであれば、ポジティブ・ネガティブどちらの内容に対しても用いることができます。
【例文】
- A案については異口同音に賛成の声を上げた人が多かった。
- 彼のボランティアにかける姿勢を、多くの人が異口同音に褒めている。
- 育児をほとんどしない人へ異口同音に非難の声が高まっている。
「異口同音」の由来
「異口同音」の由来は大きく分けて2種類あります。有力な説は「中国の書物」と言われています。
中国の書物『抱朴子』と『宋書』
「異口同音」は、中国の書物『抱朴子』(ほうぼくし)に由来しています。作者は葛洪(かつこう)で晋の時代の道教の研究家です。
内篇20篇と外篇50篇からなり、神仙術について書かれた内篇の『道意』(どうい)の中に「異口同音」とほぼ同じ意味の「異口同声」(いくどうせい)という語が見られます。この語句が元となって「異口同音」ができたということです。
時代が下って、中国の宋の歴史書『宋書』の「列伝傳第十三・庾炳之伝」に、「異口同音」という四字熟語が使われています。
仏教の経典『弥勒大成仏経』
仏教の大乗仏教について書かれた経典「弥勒大成仏経」(みろくだいじょうぶつきょう)に、「異口同音」が使われたのが由来という説もあります。
経典のなかでは、釈迦が唱えた説法に感激した多くの衆生(しゅじょう:この世にいる全ての命ある生物)が口々に誉め称える言葉を発する様子や、お堂に集まった仏教徒が口々に同じように念仏を唱えている所を描写して「異口同音」と表しています。
「異口同音」の類語や類似表現
使用頻度が高い2「多数が同じ意見である」という意味合いの類語や、似ている言い回しを紹介します。
過半数の賛成を得る
「過半数の賛成を得る」(かはんすうのさんせいをえる)は、全体のうち半分を過ぎた数の賛成があったことを表します。半分よりも多いため、その場のうちの多数の方から賛同を得ていることになりますね。
「過半数」という言葉を使う際には、「過半数に達する」や「過半数を占める」という言い回しが適切です。
【例文】
- 過半数の賛成を得て、私の意見が摂り入れられることになった。
- 反対票が過半数を占め、今回の議案は否決された。
異口同辞
「異口同辞」(いくどうじ)とは、その場にいる人が同じ語句や意見を言うことです。人がみんなで賛成しているというニュアンスを含んでいます。「異人同辞」(いじんどうじ)も同様です。「辞」は言葉などのことを表します。
「異口同音」とよく似ていますが、違う点は同じ意見の人の数です。「異口同音」は多数の人が同意していることを表し、少数意見や僅かではあっても対立する立場の人がいます。
しかし、「異口同辞」はその場の全ての人が賛成していることになり、反対者は見当たりません。
【例文】
- 異口同辞に意見がまとまり、すぐに決議した。
- 根回しをしたおかげで、異口同辞にまとまった。