「飴と鞭」とは?
「飴と鞭(あめとむち)」とは、「子どものしつけなどで、甘い面と厳しい面の両面。また、一般におだてと脅しを併用すること」という意味のことわざです。
支配や指導の方法の一つであり、甘い扱いをして譲歩する一方で厳しく締めつけることをたとえる言葉です。政治技術のことを指す場合は、「心地よい生活条件と厳しい弾圧を併用すること」を表しています。
「飴と鞭」の由来
「飴と鞭」の由来は、十九世紀のプロイセン首相であるビスマルクの政策にあります。社会保険制度によって労働者を優遇する一方で、社会主義者鎮圧法を制定して一国を支配したことから「飴と鞭」の政策を最も巧みに行ったと評されています。
「飴」は、被治者の喜ぶものを与えて歓心を買うことを意味しており、「鞭」とは、暴力によって被治者を恐怖させることを表しています。元はドイツ語で「甘パンと鞭(Zuckerbrot und Peitsche)」でしたが、日本語に訳される際に「飴と鞭」となりました。
「飴と鞭」の使い方
「飴と鞭」は、誰かに指導を行うような場面で使うことができます。ビジネスにおいては、部下や社員の育成の場面で使えます。
【例文】
- 子どものしつけには飴と鞭が必要である。甘やかしてばかりでは子どものためにならない。
- 担任の先生は、飴と鞭をしっかり使い分けており、普段は優しいが怒るととても恐い。
- 厳しい事で有名な部長であるが、部下が成功するととことん褒めてくれる。飴と鞭を使い分けているのだろう。
- 私は犬のしつけに飴と鞭を使っている。犬が悪さをした時はきちんと叱りつけ、犬がちゃんと私の言うことを聞いた時はおやつをあげるようにしている。
- 前任の大統領は、飴と鞭を巧みに使い分けて国を統治し、多くの国民から愛されていた。
「飴と鞭」の英語表現
「飴と鞭」の英語表現は、「carrot-and-stick(にんじんと棒)」です。馬を調教するときには、好物である「にんじん(carrot)=飴」と、嫌いな「たたく棒(stick)=鞭」を用いることからきています。
「飴と鞭」の類語
「減り張り/乙張り」
「減り張り/乙張り(めりはり)」とは、「ゆるむことと張ること。特に、音声の抑揚や、演劇などで、せりふ回しの強弱・伸縮や物事の強弱などをはっきりさせる」という意味を持つ言葉です。
元は、邦楽用語の一つであり、演奏における声や音の強弱の変化をいう言葉です。「減り」「張り」とは音の高低を意味しています。西洋音楽では「デュナーミク」と言います。
【例文】
- 夏休みだからといってだらだらせずに、減り張りをつけた生活を送りなさい。
- 社長の話には減り張りがないので、頭に入ってこない。
「けじめをつける」
「けじめをつける」とは、「物と物との相違、区別をつける」「道徳や規範によって行動・態度に示す区別をつける。節度ある態度をとる」といった意味を持つ言葉です。
教育や指導の場面で「けじめをつける」と言うと、「甘さと厳しさの間に明確な一線を引くこと」を表します。
【例文】
- たとえ親子の間であっても、けじめをつける必要がある。
- 仕事は仕事、プライベートはプライベートと公私のけじめをつけることが大切である。
「硬軟織り交ぜる」
「硬軟織り交ぜる」とは、「様々な方法で物事に取り組む」「厳しさと優しさを使い分ける」という意味の言葉です。「硬軟」とは「硬いこと」と「軟らかいこと」を表しており、強硬と軟弱のことを意味しています。