「燎原の火」の意味
「燎原の火」(りょうげんのひ)とは、勢いがあって防いだり止めたりできないこと、盛りを迎えていてとてつもない勢いで広がっていくことを意味する言葉です。四字熟語で「燎原之火」(りょうげんのひ)とも書きます。
「燎原」とは?
「燎原の火」の「燎原」という言葉自体を知らない、という人も多いでしょう。「燎原」とは、野原を焼くこと、またはすでに火が燃え広がった野原を指す言葉です。
春を迎える前の、草が枯れているような季節、野原に火を放つとあっという間に燃え広がってしまう様子がイメージできるかと思います。
「燎原の火」の使い方
「燎原の火」という言い回しは、やや文語的な表現です。日常の会話の中で使われる機会は少なく、歴史小説や、古い時代設定の映画のセリフなどに見られます。
比喩的に使われ「燎原の火のように」と使う場合もありますし、「燎原の火のごとくに」という古めかしい言い方で使われることもあるでしょう。
本来は、単に「勢いがあること」を表す言葉です。しかし、「火が燃え広がる」ことから「火事」・「戦火」などのように悪い出来事が連想されるためか、悪いことが手を付けられぬくらいに広がっていくたとえに使われるときに、よく使われます。
例文①勢いづく
- 彼は若手の政治家ではあるが、弁舌さわやかで多くの人を魅了し、首相に推す声が燎原の火のように大きくなっていった。
- 勝ち戦に乗じて、燎原の火のごとく周辺の国を次々に支配下に置いていった。
例文②悪い物事が広がって行く
- 新型肺炎は、燎原の火のように各国に伝播している。
- 世の中にはデマを信じる人が多い。誤った情報は燎原の火のように広がっていくものだ。
- スキャンダルは燎原の火のように広まるだろう。
「燎原の火」由来
「燎原の火」は、20巻58編からなる中国の書物『書経』に由来しています。『書経』は、儒教の重要な経典「五経」の1つで、中国古代の聖人や賢人の儒教の教えが載せられた書物です。
そこには、「火の原に燎えるが若く、郷邇す可からず。其れ猶お撲滅す可けんや(ひのはらにもえるがごとく、きょうじすべからず。それなおぼくめつすべけんや)」とあります。
「火が野原を燃やすように、近づけない。鎮火させることもできないだろう。」と、いう意味です。