「この場を借りて」とは?
「この場を借りて」とは、誰かに用意してもらった場や、何らかの主たる趣旨を述べる機会の中で、自分の用件をへりくだって述べる際に用いられる、前置きの文句です。
噛み砕いて言えば、「本来は、正式な場を自分で設けて行うべき手続き(感謝・謝罪・その他用件)を、この機会を勝手に利用して(=借りて)簡便に済ませる無礼をお許しください」というニュアンスで使うのが「この場を借りて」です。
あくまでも自分をへりくだる謙遜表現の一種であり、使い方さえ間違えなければ、「この場を借りて」と言っても無礼や非礼に当たることはありません。
「この場を借りて」の使い方①:ビジネス
ビジネスの世界では、些末なことであっても、感謝や謝罪の伝達が重要となるケースが少なくありません。しかし、相手にも都合があるため、「感謝だけ」「謝罪だけ」の機会を持つことは難しい場合があります。
また、あくまでも通常業務の範囲内でちょっと融通を利かせてもらった場合や、対価を前提としていない相手の善意などに対し、大げさな感謝や謝罪の意を伝えると、かえって相手に気を使わせてしまうこともあるでしょう。
そんな時、他の伝達事項に織り交ぜる形で「この場を借りて御礼申し上げます」とすることで、謙譲の意を示しつつ、スマートに意思表明を行うことができます。
例文
【メールなどで】
- (本件に加えて)また、先日は、便宜を図っていただきありがとうございました。大変助かりました。この場を借りて御礼申し上げます。
【プレゼンなどで】
- (本件に添えて)なお、この資料の作成にあたっては、〇〇氏の助言を大いに参考にさせていただきました。この場を借りて、感謝を申し上げます。
【SNSなどで】
- 以上が、今回の事態の経緯です。この度は、私の軽率なふるまいのために皆様にご迷惑をおかけいたしました。この場を借りて、お詫び申し上げます。(※注意:過失のレベルが大きく、正式な謝罪が必要な場合には使用できない。あくまでも責任が追及されない場合のみ)
「この場を借りて」の使い方②:スピーチ
「この場を借りて」は、ビジネス以外でも、例えば結婚式など、自分以外の誰かが設けた場において、自分の意見・主張をへりくだって述べる際にも使うことができます。
この場合は、表明する内容は感謝や謝罪に限らず、自分の気持ち、ちょっとした伝達事項のアナウンスにも使用可能です。
例文
【結婚式などで】
- この場を借りて、一言お祝いを言わせていただきます。新郎新婦のお二人、おめでとう!どうかお幸せに!(※結婚式はもともとお祝いの場ですが、一言言う場を借りるという謙遜に重きが置かれています)
【忘年会などで】
- 皆さんのおかげで、今年も何とか乗り切ることができました。この場を借りて、お礼を言いたいと思います。みんなありがとう!
「この場を借りて」の注意点
「この場を借りて」は、自分をへりくだる便利な表現ですが、だからと言って、へりくだる方法を間違えては相手に大変無礼な印象を与える可能性があります。具体的には、「場」と「内容」に注意しましょう。
「場」と「内容」に注意
例えば、謝罪会見のような「謝るために用意された(自分で用意した)場」において「この場を借りて、謝る」ことはできません。この場合は「場を借りる」こと自体が不適当です。
また、「この場を借りて」には、大雑把に言えば「せっかくなので(善意で)ここで言っておく」というニュアンスが含まれているため、伝える「内容」の重大性が大きい場合には使用NGです。
「この場を借りて」が使えるのは、「(明らかに)借りてもよい場である場合」と「借りたその場のみで完結する内容である場合」に限られるということにご注意しましょう。