「言うに事欠いて」の意味
「言うに事欠いて(いうにことかいて)」とは、以下の意味を持つ言葉です。なお「言うに事を欠いて」と表記することもあります。
- ほかに言い方があるだろうに。
- ほかにも話題があるだろうに。
「言うに事欠いて」は、いずれの意味においても相手を非難したり、たしなめるニュアンスを含みます。相手の発言に対する不平や不満などが無い場合は用いませんので気をつけましょう。
「言うに事欠いて」の使い方
①ほかに言い方があるだろうに
「言うに事欠いて」を「ほかに言い方があるだろうに」の意で用いる際の使いどころは、例えば、相手の話を受けて、「いやまぁ、そうだけどさぁ…そんな言い方しなくてもいいじゃん」「うーん、他にもっとマシな言い方があるよね」などと感じたときです。
このようなシチュエーションが起こりやすいのは、相手の発言が、「あまりにも直接的な物言い」や「偏った考えに基づく発言」などのときでしょう。そのような文脈において「言うに事欠いて」を使います。
①の使用例
(学生A)
アイツまた遅刻したそうなんだけど、その時の言い訳が「道で倒れていたお婆さんを助けていて遅れた」らしいんだよ。
(学生B)
おいおい、前も似たような言い訳してたよな。言うに事欠いて、今回もまたそれかよ。そりゃ先生も疑うわ。
②ほかにも話題があるだろうに
「言うに事欠いて」を「ほかにも話題があるだろうに」の意で用いる際の使いどころは、例えば「他にも話題なんて沢山あるだろうに、よりによって、その話題をここで切り出すなんて…」と感じたときです。
人には誰しも「触れられたくない話題」というものあるとされています。それにあえて踏み込むような発言をする人を非難したい際で使うと良いでしょう。
②の使用例
(男性C)
この前の飲み会で、先輩がFX投資の素晴らしさを延々と語りはじめて、それを聞いてたE男が明らかにピクピクしているのが見えたから、こっちは気が気じゃなかったよ。
(男性D)
おいおい、E男って確かこの前FXで有り金ぜんぶ溶かしたって言ってたじゃん。言うに事欠いて、E男の前でFXを語るなんて…。
「言うに事欠いて」の成り立ち
「言うに事欠いて」は、「言う」と「事欠く」の二語で構成される表現です。「言う」は「言葉」や「発言」を指しており、「事欠く」は、「必要なものが足りなくて不自由する」という意味で使われます。
つまり、「言うに事欠いて」とは、「必要な言葉が足りなくて不自由する」ことを表しており、そこから、「他に言い方があるだろうに」や「ほかにも話題があるだろうに」といった意味につながっていきました。
「言うに事欠いて」の類語
言わでもの事
「言わでもの事(いわでものこと)」とは、「言わなくてもよいこと。言わないほうがよいこと」を意味する言葉です。「言わでも」は、動詞「言う」の未然形に、接続助詞「で」と係助詞「も」が付いた表現です。
【使用例】
彼は、言わでもの事を言ってしまい、彼女を怒らせてしまった。
言わずもがな
「言わずもがな」とは、以下の意味を持つ言葉です。
- 言う必要のないこと。むしろ言わないほうがよいこと。
- 言うまでもないこと。もちろん。
「言わずもがな」は、動詞「言う」に打ち消しの助動詞「ず」を付けた「言わず」に、さらに願望の終助詞「もがな」を付けた表現です。「言わないことを願う」を表しており、それが上記二つの意味へと派生していきました。
【使用例】
- 彼に対して、言わずもがななことを言ってしまい、関係がギクシャクしている。
- この商品は若者の間では言わずもがな、現在ではお年寄りの間でも評判なんです。
「言う」に関する他の成句
言わずと知れた
「言わずと知れた」は、「言わなくてもわかっている。わかりきった」という意味の言葉です。
【使用例】
松茸は言わずと知れた高級食材だ。
言うも更なり
「言うも更なり(いうもさらなり)」とは、「言うまでもない」という意味の言葉です。なお、「言えば更なり」と表記することもあります。「更なり」の「更」は、「今更」の略で、「今更言うまでもない」ことを指しています。
【使用例】
健康が第一なのは、言うも更なりである。