「草葉の陰」とは?
「草葉の陰」:意味
「草葉の陰」は「くさばのかげ」と読みます。草や葉の陰になったところとは、埋葬された地面の意。転じて、「墓の下・あの世」を指す婉曲表現となりました。
「お母さんもきっと草葉の陰から見守っているよ」のように用いられた場合、「草葉の陰から(あの世)から」という言葉から、聞き手の母親はすでに亡くなっているということが分かります。
「草葉の陰」と混同されがちな表現
「草葉の陰」は「陰ながら」と混同されやすい表現です。「草葉の陰」を生きている人に対して使うのは誤りです。母親が生きているのに、「お母さんもきっと草葉の陰から見守っているよ」と言ってしまうと、笑い話では済まされません。「陰ながら」については後述します。
「草葉の陰」の誤表記
「草葉の陰」は、「草場の陰」「草葉の影」「くさはのかげ」などの誤表記が発生しやすい言葉ですので注意しましょう。漢字の表記については、次の項でご説明します。
「草葉」と「陰」
「草葉」と「草場」の違い
「草葉(くさば)」とはその字のとおり「草の葉」という意味で、草や葉の生い茂っているさまを表す言葉です。一方、「草場」は牧草地を指しますから、「くさばのかげ」には「草葉」が用いられます。
なお、「草葉」を用いた表現には次のような言葉があります。「草葉色」は、若草が成長して色濃く青みを帯び、くすんだ黄緑のような草の色のこと。「草葉の露」は、草の葉の上にとどまった露のことで、今にも落ちそうな情景から、はかない命のことを喩えた言葉です。
「陰」と「影」の違い
「陰(かげ)」の意は「暗い感じがすること」で、「 光がさえぎられて当たらない所」「物などにより視線がさえぎられ見えない所」「 人の目のとどかない所」を指します。
一方で、「影(かげ)」とは光と対になるもので、太陽によってできる物の影などを意味する言葉です。「くさばのかげ」の場合、「かげ」というのは、草葉に隠れた場所のことを指しますので、「陰」という漢字が当てられます。
「草葉の陰」:使い方
- 亡くなった祖母も、きっと草葉の陰から見守ってくれているだろう。
- あと一歩というところで、病で亡くなった彼は、草葉の陰から悔しがっているだろう。
- 父は亡くなる前に「これからも草葉の陰から応援しているからな」と言った。
「陰ながら」とは?
「陰ながら」という言葉には、「当人に知られない所で、その人のために物事を行うさま」という意味があります。簡単に言えば「ひそかに」「こっそり」ということです。表立って目立つ行動はしませんが、相手のことを思っている様子が感じられます。
【使い方】
- 陰ながら、あなたの無事を祈っています。
- 陰ながらお慕いしておりました。
「陰ながら」と「草葉の陰」とは使い方が間違えられやすい表現です。上でもご説明しましたが、「陰ながら」の場合、動作主は生きていますが、「草葉の陰」の場合、動作主は亡くなっています。
「草葉の陰」:類語
「草葉の陰」の類語
「草葉の陰」=「あの世」を表す言葉です。あの世に類する言葉には次のような言葉が挙げられます。
- 冥途(めいど)
- 天国、地獄
- 黄泉の国(よみのくに)
- 空
「草葉の陰から」を言い換える言葉
「草葉の陰から」は「あの世から」という意味ですから、次のような場合、「天国から」「空から」と言い換えることができます。
【例】
- 草葉の陰から見守っているでしょう。
- 天国から見守っているでしょう。
- 空から見守っているでしょう。