「阿鼻叫喚」の意味
「阿鼻叫喚(あびきょうかん)」は阿鼻地獄(あびじごく)と叫喚地獄(きょうかんじごく)という2つの地獄を合わせた言葉です。地獄はキリスト教やギリシア神話などにもありますが、この2つの地獄は仏教に出てくる地獄です。
仏教では、生前犯した罪に応じて責め苦の違う地獄に分けられます。中でも阿鼻地獄と叫喚地獄は重い罪を犯した人が死後に堕ちると言われていますので、そこでの責め苦は重く、非常に苦しいものとなるのでしょう。
「阿鼻叫喚」は、阿鼻地獄と叫喚地獄の亡者たちがあまりの苦しさに混乱し泣き叫ぶ様子も表すようになり、いつしか苦しみや悲惨な状況の代名詞にもなっていきました。
「阿鼻叫喚」の使い方
- 観光客で賑わう名所だったこともあり、事件現場は逃げ惑う人々で阿鼻叫喚の巷(ちまた)と化した。
- 前任者が2人も倒れた炎上プロジェクトとは聞いていたが、予想以上に阿鼻叫喚を極めていた。
- 前代未聞の大災害で、街は崩れ去り阿鼻叫喚の様相を呈していた。
「阿鼻叫喚」はどんな地獄?
仏教の地獄は八大地獄と八寒地獄に分かれます。八大地獄は炎や熱で苦しめる地獄、八寒地獄は名前の通り寒さや冷たさで苦しめる地獄です。
八大地獄や八寒地獄はさらにそれぞれ8つの地獄に分けられます。阿鼻地獄と叫喚地獄はどちらも八大地獄の8つの地獄の一つです。それぞれの特徴を見てみましょう。
阿鼻地獄
「阿鼻地獄」は「無間地獄(むげんじごく)」とも呼ばれる最悪の地獄です。この地獄に堕ちた人は逃れることも休むこともできないまま絶え間ない苦しみを受けます。
ここでの責め苦はあまりにもつらく、そのつらさは他の地獄からみても千倍にもなるとされています。なお、「阿鼻」の名前の由来はサンスクリット語の「avici」です。
阿鼻地獄に堕ちる人が犯した大罪のひとつは五逆(ごぎゃく)です。五逆罪には諸説ありますが、主に次の5つとされています。
父親を殺すこと、母親を殺すこと、阿羅漢(あらかん)を殺すこと、仏身を傷つけること、僧侶の和合を破壊することです。阿羅漢は仏教徒の最高位とされる聖者で、僧侶の和合とは仏教徒の教団を指します。
阿鼻地獄に落ちるもう一つの大罪は謗法(ほうぼう)で、これは仏やその教えをけなして悪く言うことや非難することです。
叫喚地獄
「叫喚地獄」は八大地獄の一つです。ここに来た亡者は、熱湯の入った大釜で煮られたり、逃げ場のない部屋の中で燃え盛る炎に焼かれます。「叫喚」という名前は、あまりの苦しみから悲鳴を上げて泣き叫ぶことに由来し、サンスクリット語では「raurava」と呼ばれます。
叫喚地獄に堕ちるのは、仏教で禁じられているお酒を飲んだ人や、結婚相手以外の人と不倫した人、盗みを働いた人や生き物の命を粗末にした人などです。
その他の地獄
「阿鼻地獄」と「叫喚地獄」以外の八大地獄に分類される地獄は次の6つです。等活地獄(とうかつじごく)、黒縄地獄(こくじょうじごく)、衆合地獄(しゅごうじごく)、大叫喚地獄、焦熱地獄、大焦熱地獄です。
なお、八寒地獄は、頞部陀地獄(あぶだじごく)、尼剌部陀地獄(にらぶだじごく)、頞唽吒地獄(あせたじごく)、臛臛婆地獄(かかばじごく)、虎虎婆地獄(ここばじごく)、嗢鉢羅地獄(うばらじごく)、鉢特摩地獄(はどまじごく)、摩訶鉢特摩地獄(まかはどまじごく)となっています。
「阿鼻叫喚」の類語
地獄絵図
「地獄絵図(じごくえず)」は亡者が地獄で苦しむ様子を表した絵のことです。「地獄絵」や「地獄変(じごくへん)」、「地獄変相(じごくへんそう)」とも言います。意味や使い方は「阿鼻叫喚」と同じで、地獄のように悲惨なことに使われます。
阿鼻焦熱
「阿鼻叫喚」は「阿鼻焦熱(あびしょうねつ)」とも言います。「焦熱」は「阿鼻地獄」や「叫喚地獄」と同じく八大地獄の一つで、炎に苦しめられる地獄です。
ここに堕ちるのは五戒を破った人や邪見の人です。言葉の意味としては「阿鼻叫喚」も「阿鼻焦熱」も同じです。知名度は「阿鼻叫喚」が圧倒的に上です。