「かゆいところに手が届く」の意味
「かゆいところに手が届く」は、細かいところまで注意が行き届いて、手落ちのない様子を言います。サービス満点な状態を例えた表現です。
背中などかきにくいところがかゆいとき、そこにぴったり手が届いてかくことができると、本当に気持ちがいいものです。
「かゆいところに手が届く」は、そのように、相手が気持ちがいい、快適だ、と感じるように、十分な配慮がなされている状態を表現した慣用句です。
「手が届く」とは
「かゆいところに手が届く」の「手が届く」は、世話が行き届く、という意味です。「手が届く」には、この他にも慣用的な意味があります。以下にその意味を例文とともにご紹介します。
- 祖母は若いころは病弱だったが、年を重ねるごとに元気になり、今では100歳に手が届く年齢になった。
- 総支配人という役職に手が届く日ももうすぐだ。
- このコート、素敵だけど…私には手が届かないわ。
1の例文のように「手が届く」は、もうすぐその年齢に達する、という意味もあります。また、2と3の例文の「手が届く」は、自分の能力の範囲内にある、という意味です。
3の例文のように、打消しの形で使われることも多い表現です。この場合は、「このコートは高くて買えない」という意味になります。
「かゆいところに手が届く」の例文と使い方
- 先日老舗旅館に宿泊した。かゆいところに手が届くような細やかなサービスに感動した。
- 忙しい私に代わり、妻が母の面倒を見てくれている。かゆいところへ手が届くほどの献身的な介護には頭が下がる。
- 今日の送別会の幹事は鈴木さんかな?かゆいところに手の届くような心遣いに、心が温かくなったよ。本当にありがとう。
「かゆいところに手が届く」は、二つ目の例文のように「かゆいところへ」と、「に」が「へ」に代わった形でも使われます。
また三つ目の例文のように「手が届く」が「手の届く」とされることもあります。表記を見てみると、「痒い所」と漢字が使われることもあるようです。
「かゆいところに手が届くような〇〇〇」といった形で、「サービス」「もてなし」「心遣い」などという名詞と一緒に使われ、それらが十分に行き届いており、気持ちがいいということを表す際に使われていますね。
「かゆいところに手が届く」の類語
至れり尽くせり
「至れり尽くせり(いたれりつくせり)」は、心遣いがよく行き届いている様子を言います。こちらも日常的によく使われる表現ではないでしょうか。
麻姑掻痒
「麻姑掻痒(まこようそう)」は、物事が思い通りに運ぶこと、配慮がよく行き届くことを意味します。「麻姑痒きを掻く」、「麻姑を倩(やと)うて痒きを掻く」とも言います。
麻姑とは、中国の伝説上の仙女です。蔡経という男が、鳥のように長い爪を持つ麻姑を見て「あの爪で背中を掻いてもらったら気持ちがいいだろう」と思った、という話が残っています。ちなみに、背中を掻く道具である「孫の手」は、「麻姑の手」が転じたものだとする説もあります。
「かゆいところに手が届く」の英語表現
- to dot the i's and cross the t's(iに点を打ち、tに横棒を付す)
- leave nothing to be desired(申し分ない)
「手」が含まれる慣用表現
「かゆいところに手が届く」と同じように、「手」が含まれる慣用表現は多くあります。以下にいくつかご紹介します。
- 手が空(あ)く:仕事が落ち着いてひまができる。
- 手がかかる:時間や労力が必要である。世話が焼ける。
- 手が切れる:これまでのつながりがなくなり、関係がなくなる。
- 手が込む:手間がかかっている。物事が複雑である。