「身も蓋もない」とは
「身も蓋もない」の字義
まずは字面から確認していきましょう。「身も蓋もない」の「身」は、「『蓋』のある容れ物の、モノを入れる方」のことを指します。ですから、「身も蓋もない」は、「包むものや隠すものが何もない、むき出しになっている」状態を指します。
「身も蓋もない」の用法
「身も蓋もない」は主に、言葉や表現に対して使われる慣用句です。「身も蓋もない言い方」や、「そんな言い方をしたら、身も蓋もない」というような使い方をします。
「身も蓋もない」の意味
この時、「身も蓋もない」の意味は、「露骨すぎる」表現や、「まったくオブラートに包んでいない」言葉づかい、また「思いやりがまるでない、歯に絹きせぬ」口調といった意味になります。
「身も蓋もない」の例文
例文をいくつか挙げてみましょう。
「身も蓋もない言い方をすれば、誰が選挙で選ばれても日本の政治はかわらない」「彼は思いやりに欠ける部分があって、身も蓋もない事ばかり言う」「身も蓋もない改革よりも、忖度した方が皆の利益になる場合がある」
このように、「身も蓋もない」はどちらかといえば否定的なニュアンスで使われることが多いようです。
「身も蓋もない」の類語
にべもない
「にべもない」は「身も蓋もない」よりも以前から使われている慣用句のようで、人形浄瑠璃(にんぎょうじょうるり)などにも用例が見えている、古い表現です。
「にべもない」の語源と意味
「にべ」は漢字で「鮸」または「鰾膠」と書きます。これは、「ニベ(鮸)」という魚に由来する言葉です。ニベはスズキ目ニベ科の海産魚で、発達した「うきぶくろ」を持つことで知られています。このうきぶくろで音を立てて鳴くほか、これを原料として膠(ニカワ)を製造します。
ニベからとれたニカワはベタベタとして粘着度が多く、そこから転じて、他人に対し親密感を与えることを指します。なので、「にべもない」といえば、「愛嬌も思いやりもない」という意味になります。
「にべもない」の用法
「にべもない」も否定的な表現で使用します。「誠心誠意いい条件を提示したつもりだったが、にべもなく断られた」というような使い方をします。「身も蓋もなく断る」という使い方はまずしないので、両者のニュアンスには多少の差があることがわかります。
さらに強調された表現としては「にべもしゃしゃりもない」という言い方があります。「にべ」はベタベタ、「しゃしゃり」はシャリシャリした感触を指すので、「味もそっけもない(=潤いや面白みがない)」といった意味になります。
その他の類語
他にも「身も蓋もない」の類語をいくつか挙げて見ましょう。「あけすけ(あからさま)」、「味もそっけもない」、「遠慮会釈(えんりょえしゃく)もない」、「取りつく島もない」などです。現代の言葉で言えば「空気が読めない」というのが一番近いかもしれません。
「身も蓋もない」の用法:実践編
「身も蓋もない」は主に否定的な用法で使われる言葉ですが、正しい用法を学べば有用な言葉でもあります。「空気が読めない」と言っては表現が強すぎる時など、「身も蓋もない」を使えば角が立つのを避けられるかもしれません。以下に、いくつか例文を挙げて見ましょう。
例文1
「飲み会に行きたくない、金の無駄だ」という後輩に対し、「空気読めよ。みんな行きたくって行くわけじゃないから」と言っては角が立つので、「身も蓋もないこと言わないで、行くだけ行こうよ。自分も早めに帰るつもりだから、一緒に店を出よう」ととりなす。
例文2
「この会議なんか意味あります?ぶっちゃけ時間の無駄じゃないですか」と言うとあけすけなので、「身も蓋もない言い方にはなりますが、現状これ以上検討の余地があるとは思えません。この案件は次回に回しましょう」と言う。
例文3
「てか、マジヤバめなんで、助けてもらっていいですか?」 というといかにもバカっぽいので、「身も蓋もない形でのお願いとなってしまい大変恐縮ではございますが、ご助力お願いできませんか」とお願いする。
このように、「身も蓋もない」を使えば、いつもより少し大人なやり取りができるようになるかもしれません。日常の語彙に加えてみてはいかがでしょう。