「爪の垢を煎じて飲む」とは?意味や使い方をご紹介

「爪の垢を煎じて飲む」とはどういう意味かご存知ですか?もちろん文字通り煎じて飲むわけではありません。今回は、日常会話での頻度も比較的高い「爪の垢を煎じて飲む」という言葉について、意味や使い方、関連する言葉も含めてご説明します。

目次

  1. 「爪の垢を煎じて飲む」とは?
  2. 「爪の垢を煎じて飲む」の使い方
  3. 「爪の垢を煎じて飲む」の類義語
  4. 「爪の垢を煎じて飲む」の英訳
  5. 「爪」を含む慣用句
  6. 「煎」を含む慣用句
  7. 「爪の垢を煎じて飲む」のまとめ

「爪の垢を煎じて飲む」とは?

「爪の垢を煎じて飲む」とは、「爪の垢のように取るに足らないものであっても、優れた人のものならば、煎じて飲んだら薬になるだろう」ということから転じて、「優れた人を手本としてあやかろうとすること」のたとえです

「爪の垢」とは、爪と指の隙間に溜まっている垢のこと。転じて、「取るにならないもの」、「ごく僅かな量」という意味。また「煎じる」とは、「薬草などを煮て薬効成分を抽出すること」です。したがって「爪の垢を飲む」や「爪を煎じて飲む」は誤りです。

「爪の垢を煎じて飲む」の使い方

  1. 「なかなか上達しないので、師匠の爪の垢を煎じて飲みたいくらいです。」
  2. 「お宅のお子さんは、自分から進んで宿題をするなんて偉いわね。うちの子にも爪の垢を煎じて飲ませたいわ。」
  3. 「また学校をサボったのか。お前も兄さんの爪の垢を煎じて飲んでみろ」
爪の垢ほどの取るに足りないものを、あやかる意味で煎じて飲むということは、逆説的に「それほどまでに見本となる人物に及ばない」ということになります。

使用例1の場合は、あやかりたいという願望とともに、自分は師匠の足元にも及ばないと暗に示すことで、師匠に対する尊敬のニュアンスを込めています。

一方、使用例2のように二者を比較する場合は、どちらかと言えば出来の悪い方に重きが置かれます。「お宅のお子さんは偉い」よりも「うちの子にも爪の垢を煎じて飲ませたい」という言葉の比重が大きいわけです。

それを踏まえて例3の文章を見てみると、発言者が「お前」と「兄さん」を比較して、「お前は兄さんに遠く及ばない」と暗に伝えているのがおわかりでしょうか。もちろん「少しは見習え」という意味合いも含まれますが、「見習え」に比べて「爪の垢を煎じて飲め」は、改善に対する期待値が薄い印象です。

「爪の垢を煎じて飲む」の類義語

「採長補短(さいちょうほたん)」

「人の長所を自分に取り入れることで、短所や足りないところを補うこと」、または、「物事の、優れたところや余ったところから、不足しているところを補填すること」を表します。訓読する場合は、「長(ちょう)を採り、短(たん)を補う」と読みます。

「爪の垢を煎じて飲む」の英訳

「爪の垢を煎じて飲む」を英語に直訳すると「Drink infusion of dirt of the nails.(爪の汚れの飲み物を飲む)」となり、これでは本来の意味は通じないので、下記の「教えを請う」、「倣う」という表現が使われます。

  • to take a lesson from 〜」(〜から教授を受ける)
  • to follow in the footsteps of 〜」(〜の歩みに続く)
あるいは、「成功した人を見習う」というより積極的な言い回しで、「あやかる」を表現します。「誰かの一部をもらう」という表現は、「爪の垢を煎じて飲む」に一番近いかもしれません。
  • take a leaf out of one’s book」(〜を見習う)

「爪」を含む慣用句

「頭の天辺から足の爪まで」

「体の上から下まで」から転じて、「何から何まで」という意味です。「頭の先から足の先まで」とも。

  • 使用例:「車が盛大に水を撥ねて行ったので、頭の天辺から足の爪までずぶ濡れになった。」

「爪に火を灯す」

ろうそくを買わないほどのケチ、または、ろうそくも買えないほど貧しいため、ろうそく代わりに放っておいても伸びてくる爪に火を灯して明かりとする様から転じて、「とてもケチなこと」「極端な倹約家」という意味です。「爪に火を点す」と表記することも。

  • 使用例:「事業に失敗して、今では爪に火を灯す暮らしだ。」

「爪の垢ほど」

爪の先には垢が溜まっても少量であることから、「ほんの僅かな量」という意味で使います。

  • 使用例:「彼のことを信じている。爪の垢ほども疑っていない。」

「爪を研ぐ」

猫などが獲物を取るために爪を研いで待ち構える様子から、「相手を倒すために準備をする」という意味

  • 使用例:「前回の雪辱を果たすために爪を研いできた。」

「能ある鷹は爪を隠す」

鷹は、獲物にその能力を知られないように、普段はその鋭い爪を隠しておくことから、「才能のある人は、軽々しくその能力を見せつけたりしない」「優れた人はいざという時のみ真価を発揮する」という意味です。

  • 使用例:「実力をひけらかさない彼の姿は、まさに能ある鷹は爪を隠すだね。」

「煎」を含む慣用句

「二番煎じ(にばんせんじ)」

「二番煎じ」には「一度煎じた薬草や茶葉を、再び煎じること。または、再び煎じたもの。」「前にやったことの模倣で新鮮味がないこと。」という2通りの意味があります。

  • 使用例:「あの映画は二番煎じと言われて不評だった。」

「爪の垢を煎じて飲む」のまとめ

スポーツ選手や俳優のインタビュー記事などで、「目標とする選手(俳優)はいますか?」との質問に、「誰のことも目標とはしていません」という回答を見かけることがあります。誰かの真似はしない、自分のあるべき姿は自分がよく分かっている、という強い意志を感じる言葉です。

他人の姿から学ぶこと、そのような謙虚な姿勢は必要ですが、「爪の垢を煎じて飲む」のも、時と場合によりけりかもしれません。

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