「ありがた迷惑」とは
「ありがた迷惑」とは「人の親切や好意が、かえって迷惑に感じられること」という意味です。
純粋に好意から出た行動に対しては、一定の感謝をする(したほうがよい)のだけれども、同時にどこか不快であったり、実はして欲しくないことであったりする場合に使います。やや複雑な含みを持つ、微妙な表現と言えます。
類語としては「おせっかい」「大きなお世話」「痛し痒し(いたしかゆし)」などがあります。
「ありがた迷惑」の成立ち
「ありがた迷惑」は「有難い(ありがたい)」と「迷惑」の複合語です。別々にみると、いずれも古くから存在する言葉です
元々の「有難い」は「あり・がたい(がたし)」で、滅多にないことを指していました。このことから珍しい、優れている、貴いなどの意味になっていったようです。現在のように「感謝をする」意味となったのは、江戸時代のことだそうです。
一方の「迷惑」の起源はさらに古く、中国春秋時代(紀元前)の政治論集『管子(かんし)』にその用例があります。本来は「是非の判断がつかない」という意味でしたが、日本で使われるようになってから、「煩わしく不快」という意味になったようです。江戸時代に両者の複合語としての「ありがた迷惑」が使われ始めました。
古い用例としては、滑稽本『古朽木(ふるくちき)』(西村伝兵衛著・1780年)に
(福岡に流罪となったときには、無実の罪を免れたいと思う一心であったが、それも今となってはありがたいようで実は迷惑に感じられる)
素直にありがとうと言えなくて…
ちなみに、「ありがた迷惑」が生まれた江戸時代には、ほかにも「ありがたい」に関連した言い回しが生まれています。
有難山下(ありがたやました):山下の代わりに山鳥・山桜・山猫・山吹(色)・山屋豆腐と続けることもあります。
有難山の鳶烏(ありがたやまのとびがらす):鳶烏の代わりに寒烏・時鳥(ほととぎす)・椎の木山椒・宝ちんたん・二軒茶屋と続けることもあります。
いずれも言葉遊び・ダジャレが大好きだった江戸時代の町人らしい言い回しですが、ストレートに「ありがとう」とは言いにくかったのでしょうか?
「ありがた迷惑」なのはこんな人?
実際にどのような行動をする人が「ありがた迷惑」なのでしょうか?ネットで探してみると、色々なタイプの人が見つかりました。
例えば…
- 風邪をひいて具合が悪いとき、やたらと心配するメール・メッセージを送ってくる。
- タバコをくわえた瞬間、慣れた手さばきでさっとライターを差し出す。
- 年下なのに、上から目線で説教をしてくる。
- 荷物の過剰な梱包。開封するときと、梱包材を処分するときが大変…。
- 入院中のお見舞いに来て、やたらと長居する。
- 特別好きではないアイドルの、昔のDVDを譲られる。
- 会社の上司にスポーツ観戦に連れていかれる。
「ありがた迷惑」の使い方
- メディアに派手に取り上げられるのも、ある意味、ありがた迷惑といえる。
- 頻繁に孫の面倒を見にくる祖父だが、内心ありがた迷惑だと思っている。
- あらかた片付いたタイミングで手伝いを申し出られても、ありがた迷惑である。
「ありがた迷惑」を英語では?
- misplaced kindness:履き違えた親切というところから「ありがた迷惑」となります。
- nuisance:迷惑・不愉快な人の行為のことを指します。
- too much of a good thing:度が過ぎてうんざり、といった感じです。
- Thank you for nothing.:皮肉・嫌味を込めて言います。