「世間知らず」の意味
「世間知らず」とは、「経験が浅く、世間の事情をよく知らないこと。うといこと。」という意味です。
世間の事情をよく知らず行動してしまった。その行動は非常識と捉えられることもありますが、「世間知らず」と表現する場合、世間に揉まれていない「純粋」や「お人好し」、「あまちゃん」といったニュアンスが含まれます。同じ意味を持つもので「世間見ず」「世間不知」という言葉もあります。
「世間」とは
さて、「世間知らず」という慣用句を構成する「世間」という言葉はどういう意味なのでしょう。「世間」とは、「人々が互いにかかわりあって生活している場」「社会での交際や活動の範囲」という意味です。
「世間」というコミュニティーの中では、自然と了解されているルールやマナーがあります。これを「常識」といいますが、「常識」と「事情」はまた別のものです。
「事情」とは「事柄の有様、事の次第」を表す熟語です。つまり世間知らずの意味するところである「世間の事情を知らない」は、「世間の有様を知らない」と言い換えられるのです。
「世間の有様」とは
たとえば、よく知らない人に「この壺は持っているだけで幸運を呼ぶありがたい壺です。1千万円のところ、あなたにだけ格安で3百万円でお売りします」と言われて、みなさんなら素直に信用するでしょうか。きっと「疑わしい」と思う人が圧倒的多数ではないでしょうか。
では、なぜ「疑わしい」と思うのか。それはこれまでの人生で見聞きしたことから、「こういった詐欺まがいの商法が世間には存在している」と知っているからです。あるいは「幸運を呼ぶ壺なんてこの世には存在しない」と断定できるだけの経験があるからかもしれません。
いずれにしても、判断の基準となっているのは知識や経験であり、その知識や経験のひとつひとつが「世の中の有り様」を知る材料になっているのです。しかし世間知らずの人にはそれがないわけですから、「へー、そうなんだ!」とすんなり信じてしまいかねません。
上記は大げさな例ですが、疑うことなく騙されたり、見通しが甘かったり、怒るべきときに大らかだったりと、世間知らずとそうでない人との間には、認識に微妙なズレが起こり得ます。このズレが「世間知らず」と「非常識」が混同される所以かもしれません。
「世間」から構成されている慣用句や言葉
- 世間擦れ…世の中で揉まれ世知にたけていること。世知(世渡り)にたけているとは、世渡り上手なこと。
- 世間体…世間の人々に対する体裁。
- 世間並み…世間の人々と同じ程度であること。ごく普通であること。他人よりも目立たず人並であって出過ぎないこと。
- 世間話…世間の出来事を話題とする雑談。あたりさわりのない世間のよもやま話をすること。
- 世間離れ…生活や考えなどが一般の社会通念と異なること。
「世間知らず」の例文と使い方
- せっかく会社に就職できたのに、すぐ辞めるなんて。まったくお前は社会の厳しさを知らない世間知らずだ。
- 娘は世間知らずだから、都会に出て悪い人間につけ入られないか心配だ。
「世間知らず」の類語
「世間知らず」の類語としては、「お坊ちゃん(お嬢ちゃん)」「温室育ち」「箱入り息子(娘)」「青い」「おめでたい」などがあります。いずれも、まだ世間に揉まれていない「ほんわか」とした様子を表す言葉です。
「世間知らず」が使われている事例
「世間知らず」の言葉が使われている事例を紹介しましょう。
爆笑芸人「世間知らズ」
吉本興業に所属する椎木ゆうた(ツッコミ担当)と西田さおり(ボケ担当)による男女のお笑い漫才コンビの芸名です。この漫才コンビは2016年に結成され、2018年には「山1-グランプリ」で優勝し、大ブレイクしました。芸名の由来は定かではありませんが、二人による漫才はまさに「世間知らず」かもしれません。
世間知らずの宇宙飛行士
『世間知らずの宇宙飛行士』はONE OK ROCKの楽曲の題名で、2011年10月に発表された5枚目のアルバム「残響リファレンス」に収録されています。遭難しそうになる宇宙船の中で、孤独と焦燥にかられる宇宙飛行士の開き直る様子を歌詞で表現しています。