「少年老い易く学成り難し」の意味
誰でも若い時は、まだまだ先が長く慌てることはないと思いがちですが、すぐ老人になってしまうものです。それに反して、学問はなかなか究めることができません。ですから、若いうちから時間を無駄にせず、勉学に励まなければなりませんよ、という意味です。
「少年」は男子だけを意味する場合もありますが、このことわざにおいては男子も女子も含んだ「若い人」を意味します。ちなみに、法律的に見た「少年」は、少年法ではニ十歳未満、児童福祉法では十八歳未満の者を言います。
「少年老い易く学成り難し」の例文と使い方
- むやみに勉強するのではなく、まず目標を達成するための計画を立てたらどうだい?少年老い易く学成り難しって言うから、時間を大切にね。
- 受験生から、一年生の時からもっとよく勉強しておけばよかった、という言葉を聞くことが多い。だから、新入生のみんなに少年老い易く学成り難しという言葉を贈りたい。
- 年を重ねるごとに時の流れを早く感じるし、記憶力の低下も実感する。少年老い易く学成り難しとはよく言ったものだ。
このことわざは、上の二文のように、若い人へのメッセージとして使われることが多いようです。しかしこの言葉の意味は、若い時にはなかなか実感しにくいものです。3つ目の例文のように、年を重ねてから言葉の意味を痛感し、後悔するときなどにも使われていますね。
「少年老い易く学成り難し」に続く言葉
「少年老い易く学成り難し」は、以下のように続くと言われています。
未だ覚めず池塘春草の夢 階前の梧葉已に秋声
(若いと思っているうちにすぐに年を取ってしまうもので、一方学問はなかなか思うように進まない。だからわずかな時間も無駄に過ごしてはならない。池の堤に春草の萌え出た頃の夢のように楽しい時間からいつまでも覚めないでいるうちに、季節はあっという間に移ろい、青桐の葉に秋の気配を感じる)
この出典には複数の説がありますので、有力なものを以下にご紹介します。
南宋の朱熹の『偶成』
長く有力と考えられていたのが、中国の南宋の学者、朱熹(尊称は朱子:1130~1200年)の詩句『偶成(ぐうせい)』の詩に基づくものとする説です。
朱子の勧学教戒の詩句にありそうな表現ではありますが、朱子の詩文集の中にこの作品は見つかっておらず、この説を疑問視する声が上がっています。
室町時代の禅林僧侶の『滑稽詩文』
近年の研究により、室町時代の僧侶の『滑稽詩文』の詩に基づくものだという説が浮上しました。この中では「春風」が「芳中」、「秋声」が「秋色」と記述されています。
また、『滑稽詩文』の中のこの詩においては「少年」は男色の対象となった僧侶の事だという説もあるようです。
「少年老い易く学成り難し」の類語
- 盛年重ねて来らず(若い盛りは二度とやってくることはないのだから、その時代を虚しく過ごしてはならない)
- 日暮れて途なお遠し(年を取ってしまったのに、やるべきことが山ほどあって、目的を達成するには程遠い)
- 光陰矢の如し(月日が経つのは、矢が飛んでいくようにあっという間のことである)
また中国の古詩『長歌行』には以下のような表現があります。
これは、若い時にしっかり勉強しておかないと、年を取ってから物事を知らないがために苦労をしなければならなくなる、という意味です。
「少年老い易く学成り難し」の英語表現
- The day is short, the work is much.(日は短く、仕事は多い)
- Art is long, life is short.(芸術は長く、人生は短い)
元は医術の習得に長い時間がかかることを言ったものでしたが、現在では医学のみならず芸術一般についてのことわざとして用いられています。