「ブサヨ」とは
「ブサヨ」とは「ブサイク(不細工)」と「サヨク(左翼)」を合わせたネット上で使われる言葉です。右翼的思想の側から、左翼的思想や意見をネット上でバカにしたり、批判する意味で使われます。侮蔑表現ですので、使うことは褒められたことではありません。
一方、左翼的思想の側から右翼的思想をネット上でバカにしたり批判する言葉に「ネトウヨ」があります。これは「ネット右翼」の略です。
「ブサヨ」の特徴
戦後の日本政治を主導してきた保守政党である自民党に対しては批判的です。反戦思想であり、憲法改正、特に第9条についても反対の立場です。沖縄基地問題に関心を持ち基地反対の立場です。
マイノリティ(少数派)について寛容で在日韓国人の権利やLGBTなどを認める立場です。環境問題についても関心が高いです。
民衆派であり貧困問題、労働問題に関心があります。個人への課税である消費税増税には反対です。逆に権力を持つ(と捉えている)企業への法人税についての増税には反対的ではありません。
ただし以上のようなことは、全体的な傾向であり、当然ながら集団や個人により異なります。
「左翼」「右翼」の概要
一般に、「左翼」は国際主義、進歩主義、社会主義などのイメージああります。一方「右翼」は国家主義、民族主義、保守主義といったイメージがあります。
進歩主義は、優れているという意味ではなく、現状から変わろうとする思想のことです。革新主義とも言われます。革命を目指したマルクス的共産主義も左翼的思想に含まれます。
保守主義は、現状から変わろうとしない思想でとりわけ伝統を重視したり、開放的ではない思想です。例えば天皇家は長く続いた伝統的なものなので右翼的思想では非常に重視すべきものになります。
ただし後で解説するように「左翼」「右翼」と各主義・思想との関係は、現在は非常に分かりにくくなっています。
「左翼」「右翼」の起源
フランス革命において、1789年の議場で革命派が左側、国王派が右側に陣取ったことが起源とされています。この時点の状況からすれば、それまでの体制は国王による伝統的統治です。つまり右側に陣取った国王派は現状維持派であり、伝統を重んじる立場です。左側に陣取った革命派(民衆派)はまさに革命・革新側です。
ナショナリズムと民族
右翼の代表的な特徴に国家主義があります。国家主義は「ナショナリズム(nationarism)」とも呼ばれますが「nationarism」の「natio」とは「生まれ」という意味であり国家でなく民族集団を意味します。そのため「ナショナリズム」というときには「外国に対して自国の自立性を主張すること」と「日本国内で(特定の)民族を主として考えること」の2通りの意味があります。
「外国に対して自国の自立性を主張すること」の意味でのナショナリズムは、例えば、自国に不利な貿易条約が自国の主張に関わらず成立していくことには反対します。江戸時代に結ばれた不平等条約は、明治維新後の日本のナショナリズムにとって許せるものではなく、日本の働きかけにより撤廃されることになりました。
一方「自国内での(特定の)民族を主として考えること」の意味でのナショナリズムは、例えば日本では(「ネトウヨ」にとって本州の民族とは異なると考えられがちな)北海道や沖縄といった地域を軽視する考え方になり得ます。実際に、特に沖縄の立場で基地反対運動を擁護すると「ブサヨ」扱いされる傾向にあります。
「左翼」と「右翼」の混乱
『「左翼」と「右翼」の概要』の項目の最後に記載した通り、現在は本来の定義では区別できなくなっています。むしろ逆転しているとすら考えられる場合もあります。これは保守である自民党が新自由主義(ネオリベラリズム)的な政策をとっていることが大きいのですが、詳しい説明は避け、例のみを以下に挙げます。
規制改革
保守を自任し実際に戦後の日本政治を担ってきた自民党が「規制改革」と呼ばれる政治的行動をとっている一方、左翼的立場である野党が保守的に現状維持を主張している例が多くあります。
例えば郵政民営化は、既存の仕組みを大きく変えることです。しかしこれは保守である自民党主導で行われ、民営化に反対したのは、保守から見れば左翼側にあたる当時の民主党や社民党などの野党でした。
2018年のユーキャン新語・流行語大賞にもノミネートされた「高プロ(高度プロフェッショナル制度)」も同様で、現状を変えようとしているのが保守の右翼側、現状を維持しようと反対したいるのが革新の左翼側です。
憲法改正
憲法改正も、戦後70年以上の伝統を持つ法律となっています。ところが憲法を改正しようとしているのはやはり保守主義の自民党で、改正反対つまり現状を維持しようとしているのは野党、現在(2018年11月時点)であれば立憲民主党などです。
ただし、現在の憲法を「アメリカ(GHQ)から押し付けられた憲法」と捉え「日本人(民族)で自ら決める憲法に改正する」という考え方を取れば、憲法改正は民族主義的な「右翼」の思想からくるものとも言えます。事実、自民党自体が憲法改正を党の目的として長く位置付けてきた歴史があります。
沖縄基地問題
沖縄基地問題では、民族主義の右翼の立場であれば外国軍を自国内に置くことは許容できません。ところが保守の現政権は米軍基地を容認しており、沖縄の米軍基地に反対しているのは左翼側です。
ただしこれも日本が自国軍隊を持ち、米軍を日本から追い出すべきだという右翼的立場もないわけではありません。
TPP
環太平洋の貿易を自由化するTPPは、進歩主義の左翼的思想からすれば賛成できるもののはずですが野党は反対の立場です。逆に、進めようとしているのは保守の自民党です。
一方、アメリカはトランプ大統領の保守的政策によりTPPには不参加となりました。これはアメリカ自国のみの利益を優先する保守主義の立場からすれば妥当なものです。
「ブサヨ」まとめ
以上のように左翼と右翼は非常に複雑な関係にあります。そのうえ「ブサヨ」は「ネトウヨ」と同じくネット上の対立的な表現でしかありません。「ブサヨ」が左翼思想そのものを指すとは言い難く、「ネトウヨ」も右翼思想そのものを指しているとは言えません。
「ブサヨ」「ネトウヨ」とも侮蔑表現であるため使用は控えるべきであると同時に、左翼・右翼やその思想を代表しているわけではない点に注意が必要です。