「猫も杓子も」の意味
「猫も杓子も」とは、どれもこれも、だれもかれも、という意味です。
「猫も杓子も」の使い方
意味は比較的わかりやすいようですが、実際どんな風に使われているのでしょうか。
•最近は、猫も杓子もインスタグラムをやっている。
•私が大学生の頃は、猫も杓子も夏はテニス、冬はスキーをしていたものだ。
•このブランドのバッグは、猫も杓子も持っているのでありがたみがない。
いずれも「だれもかれも」という意味で使われているのですが、注意すべき点があります。それは軽い蔑視が含まれている、という事です。個々の置かれている状況や、違いを考えずに真似をして同じような言動をとることへの批判的な気持ちが込められているのです。
「猫も杓子も」の誤った使い方
•今年の新入社員は、猫も杓子も礼儀正しくて好感が持てる。
•今シーズンは猫も杓子も花柄ワンピを着ていてかわいいから私も欲しいと思っている。
•日本人は猫も杓子も親切だ。
これらの例文の「猫も杓子も」は、確かに「だれもかれも」という意味ですが、肯定的なニュアンスが含まれているので、間違った使い方だと言えます。
「猫も杓子も」の語源
「杓子」とは、おたまやしゃもじのことを言います。では、どうして猫と杓子という二つの性質の全く異なるものが、どれもこれも、だれもかれも、という意味になるのでしょうか。語源を見ていきましょう。実は「猫も杓子も」の語源には多くの説があります。
女子も弱子も
最も一般的な説は「女子(めこ)も弱子(じゃくし)も」がなまったものという説です。女子とは女のこと、弱子とは子どものことです。
禰子も釈氏も
滝沢馬琴による「禰子(ねこ)も釈氏(しゃくし)も」という説もあります。禰子とは神主、釈氏とは釈尊をまつる僧侶を意味します。つまり神主やお坊さんといった偉い人もみんな、という意味が変化したものとする説です。
その他の説
その他にも以下のような説があります。
•寝子(ねこ=寝る子)も赤子(せきし=赤ん坊)も
•猫づらの人も杓子づらの人も(=どんな不器量な人も)
•猫も杓子(=主婦)も家内総出で
また猫も杓子も日常目につきやすいものだから引き合いにだされた、とする説もあります。
「猫も杓子も」の用例
1668年に刊行された『一休咄』には以下の一文が残されています。『一休咄』とは、とんちで有名なあの一休さんの幼少期からのエピソードがえがかれた本です。
(生あるものは一様に死んでいくのだ。釈迦も達磨も猫も杓子も)
「猫も杓子も」の類句
•どいつもこいつも
•右へならえ
これらも「猫と杓子」と同じように、人の真似をしていることに対して批判的なニュアンスが含まれていますね。
「猫も杓子も」の英語表現
「猫も杓子も」を英語で表現すると、everyone,everybody,anybodyなどがあげられます。慣用句的な表現には以下のようなものがあります。
•everyone that can lick a dish(皿をなめることができる者はだれも)
•every Tom, Dick and Harry(ありふれた人間のだれもかれも)
まとめ
「猫も杓子も」という言葉は、何気なく耳にしたり使ったりしていますが、語源には思いがけないものもあったのではないでしょうか。使いやすい言葉ですが、蔑視したり批判したりするニュアンスが含まれているので、注意して使うようにしてくださいね。