「おいたわしや」とは
「おいたわしや」とは、「おかわいそうに」「とてもお気の毒に思います」など、不幸な境遇にある人に対して同情や嘆きを表す言い回しです。
「おいたわしや」の構成
「おいたわしや」は、「お」+「いたわし」+「や」から構成されています。
- お:「御」。丁寧を表す接頭語。
- いたわし:「労しい」。「や」が付いて、「労しい」→「労し」に縮まった。
- や:心に深く感じたことを表す間投助詞。
このことから、「おいたわしや」の意味のコアを担っているのは「いたわしい(労しい)」であることが分かりますね。では、次に、「いたわしい(労しい)」について見ていきましょう。
「いたわしい(労しい)」の意味
「いたわしい(労しい)」とは、簡単に言えば、労り(いたわり)が必要な状態にあるという意味です。「労る」には複数の意味がありますが、ここでは、気遣って大切にする・立場の弱い人に同情して親切にすることを指します。
よって、「いたわしい」の意味は、不憫に思う・あまりに気の毒で同情するということです。
「おいたわしや」の使い方
「おいたわしや」は、現代の日常会話ではほとんど用いられません。小説や漫画、ドラマのセリフとして使われる「おいたわしや」を見聞きする機会の方が多いでしょう。
「おいたわしや」は、不幸に見舞われた人に対して言う場合もありますし、誰に掛けるともなく口をつく嘆きとして出てくることもあります。
「おいたわしや」の例文
- 「先生が心労でこんなにやつれてしまわれて…おいたわしや」
- 「おいたわしや。交通事故でご家族を亡くされるなんて…」
- 「火事で家を失われるとは、おいたわしや」
「お労しや 兄上」
「お労しや 兄上」は、『鬼滅の刃』(きめつのやいば)に出てくるセリフです。吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)による漫画『鬼滅の刃』は、大正時代を舞台としたダークファンタジー作品で、鬼と剣士たちとの戦いを描いています。
「お労しや 兄上」と言ったのは継国縁壱(つぎくによりいち)です。縁壱の双子の兄・巌勝(みちかつ)は、縁壱の才能に嫉妬するあまり、黒死牟(こくしぼう)という鬼になってしまいました。縁壱が巌勝と対決したとき、兄にこのように言い放ったのです。
「おいたわしや」の類似表現
「お辛いでしょう」
「お辛い(つらい)でしょう」は、不憫に思う気持ちを表すシンプルな言い回しです。「おいたわしや」とほぼ同じ意味ですが、こちらの方が口語的なので使いやすいですね。
「言葉が見つからない」
「言葉が見つからない」は、必ずしも相手への同情を表現するものではありません。悲しみ、喜び、怒り、驚きなどさまざまな感情が溢れだすような物事に遭遇したとき、言葉を失ってしまうという状態を指す言い回しです。
しかし、「愛犬を亡くして悲しんでいるあなたに掛ける言葉が見つからない」のような使い方においては、「おいたわしや」に近い意味合いとなります。
「胸が痛む」
「胸が痛む」には、良心が咎める(とがめる)という意味もありますが、心に苦痛を感じる・心配するといった意味もあります。「病気に伏せっているあなたを思うと胸が痛みます」のように用いれば、「おいたわしや」と同様に、相手に対する同情を表すことが出来るでしょう。
「おいたわしや」のダジャレ
「お労しや」と漢字で書いてあるならともかく、前後の文脈もなく、「おいたわしや」という平仮名だけ見るとどこで区切って良いのか分からないという人もいるようです。そんなところから、次のような誤解やダジャレが生まれました。
- 老いたワシや:「車窓に映っているのは誰だ?…老いたワシ(自分)や!」
- おい。タワシや:「あれ持って来て」「(雑巾を差し出して)どうぞ」「おい。(要るのは)タワシや」