「目に浮かぶ」とは
たとえば、読み聞かされた童話からお菓子の家を、戦時中の手記から戦争の様子を、祖母の昔話から子供の頃の母の姿を、勉強に励む生徒が難関大学に合格する姿をリアルに思い描いたといった経験がある人も多いでしょう。
このように、私たちは実際に見ていないものや将来起こりそうなことを、まるで現実に起こっているかのように感じることができます。これを表したのが「目に浮かぶ」という慣用句です。
つまり、「目に浮かぶ(めにうかぶ)」とは、「現実ではないものの姿や景色などが、実際に目で見ているかのように、頭の中に描くことができる」という意味です。
「目に浮かぶ」の使い方
「目に浮かぶ」を使う際、「ありありと」や「まざまざと」などの副詞を前に付けて用いることがあります。これらは、頭の中に浮かぶ映像をさらに鮮明に、現実感を持って感じるさまを表現する言い回しです。
【例文】
- 東京に就職して5年。久しぶりの帰省のために航空券の予約をした時、懐かしい両親の顔が目に浮かんだ。
- 彼の歌詞はストーリー性が豊かで、情景がありありと目に浮かぶところが気に入っている。
- 祖母が亡くなったのは十数年前のことだが、今でも笑っている祖母の顔をまざまざと目に浮かべることができる。
「目に浮かぶ」の類語
「脳裏に浮かぶ」
「脳裏」(のうり)とは心の中や頭の中という意味です。よって、「脳裏に浮かぶ」とは、「頭の中に物事の光景や状況、考えなどが浮かんでくる」ことを表しています。
「目に浮かぶ」のは光景や状況ですが、「脳裏に浮かぶ」ものにはアイディアといったことまでも含まれる点では少し異なります。
【例文】
- 近頃、大きな地震のニュースが多い。それらを見聞きするたびに、過去の震災の悲惨な状況が脳裏に浮かぶ。
- 彼は仕事に行き詰まると車で遠出をする。ドライブをしていると、良い考えが脳裏に浮かんでくるそうだ。
「想像できる」
「想像」とは、実際には経験していないことや現実には存在しないものを心の中に思い描くことです。この「想像」を使って「目に浮かぶ」を言い換えるならば、「想像できる」(現実にはないものや将来に起こりうる事柄が分かるさま)となります。
【例文】
- 彼が提案した新製品のアイディアは型破りなものだったが、製品を手に取る消費者の笑顔が容易に想像できた。
- 彼女が彼との結婚を決めた理由の一つは、「一緒に暮らす未来が具体的に想像できた」ことだそうだ。
「予想できる」
「予想」とは、「物事の成り行きや結果について、前もって見当をつけること」という意味です。「予想」という言葉で「目に浮かぶ」を表現すると、「予想できる」(将来に起こりうる物事や状況が分かるさま)となります。
ただし、「予想できる」は「目に浮かぶ」と違い、フィクションの一幕や過去の出来事などの、将来的にもあり得ない事柄に対しては用いることができません。
【例文】
- 今シーズンのAチームは選手達の調子も良く、士気も高いので好成績が予想できる。
- 才能に甘んじることなく努力を続けてきたB君を知る者には、今日のB君の成功は予想できていたことだった。
「目に浮かぶ」の英語表現
「目に浮かぶ」を英訳する際は、上で紹介した類語なども踏まえて次のように意訳すれば良いでしょう。
- 「comes to my mind」:頭に思い浮かぶ→目に浮かぶ
- 「can imagine」:想像がつく→目に浮かぶ
- 「picture」:思い描く、想像する
【例文】
- The beautiful scene comes to my mind. (あの美しいシーンが目に浮かぶ)
- I can imagine the face of my grandmother. (祖母の顔が目に浮かぶ)
- I can picture her playing the piano.(彼女がピアノを弾いている姿が想像できる)