「首が回らない」とは
「首が回らない」とは、借金が増えて金策ができず、やりくりできないことを言います。一言で言えば、支払不能状態に陥っていて破産寸前、または破産まではいかなくても収入よりも支出がはるかに上回っている状態ですね。
では、このような状態をなぜ「首が回らない」と言うのでしょうか。多くの人は、借金があると安心して暮らせません。その借金が増えて、督促(とくそく)や取り立てで追いつめられると、強度の緊張で首の周りの筋肉が固くなり首が動かなくなることがあるのです。
「首が回らない」という表現は、この肉体的な症状をそのまま経済的な問題でどうしようもないような時の比喩として使っているわけですね。
「首が回らない」医学的な原因
「首が回らない」状態を引き起こす医学的な原因としては、筋肉疲労や緊張によって首や肩の周辺の筋肉の血行不良・血行障害が挙げられます。借金による緊張以外にも、枕が合わないとか同じ姿勢でパソコン作業を長時間するとかいったことも首や肩の緊張の要因となります。
頭と首は、背骨と言われる脊椎(せきつい)と頚椎(けいつい)まわりの、何層にも重なった筋肉で支えられています。血行不良によってこの筋肉に異常が発生すると、首の神経を圧迫して痛みが生じ、首が自由に回せなくなるのです。
そして「首が回らない」ことは、変形性頸椎(けいつ)症や頸椎椎間板ヘルニアなどたくさんの病気の原因になり得ます。
「首が回らない」の使い方
- 感染症の影響でリモートワークになって収入が減ったため、家や車のローンの支払いで首が回らない。
- あなた、今月はお祝い事が続いて首が回らないようだから、今日のデート費用は私が持つわ。
- 取引先が次々と倒産して、うちもいよいよ首が回らなくなってきた。
「首が回らない」の類語
「やりくりできない」
「やりくり」は、「やり繰り、遣り繰り」とも書き、いろいろ工夫して足りないものを補うという意味を表す言葉です。
それを否定して、「やりくりできない」とすることで、工夫しても不足を補えない状態を表します。「やりくちがつかない」も、同じ意味の言葉です。
「やりくり」という表現は、金銭だけでなく、仕事や家事、時間などいろいろなものを対象に使うことが可能です。
【例文】
- 収入が減って、家計のやりくりができないと妻が嘆いている。
- 毎日残業続きで帰宅が深夜になり、デートの時間をやりくりできない。
- 会社の運転資金のやりくりがつかなくて、朝から社長はあちこち金策に走り回っている。
- 妻は、家事育児のほか習い事をいろいろやっているが、スケジュールのやりくりがつかなくなって習い事を減らした。
「火の車」
「火の車」という言葉は、経済状態がはなはだしく悪いことを表します。本来、「火の車」とは、地獄の鬼が罪を犯した亡者を乗せて燃えている車のことです。
そこから、債権者(金を貸した側)などを鬼に見立てて、その取り立てや家計のやりくりに苦しむことを例えて「火の車」と言います。
【例文】
- 夫は仕事が長続きせず、酒ばかり飲んでいるので家計はいつも火の車だ。
- 彼は、青年実業家として羽振りがよさそうだが、本当のところは借金だらけで火の車だそうだ。投資の勧誘は断ったほうがいいよ。
「自転車操業」
「自転車操業(じてんしゃそうぎょう)」は、資金の借り入れと返済を繰り返しながら、どうにかこうにか事業を続けている状態のことを言います。
自転車は、漕ぐことをやめると倒れてしまいますね。そこから資金のやりくりを車輪の回転に例えて、無理にでも仕事を続けていないとつぶれてしまうような経営状態のことを「自転車操業」と言うのです。
【例文】
- 我が家の家計は、ローンや教育費の支払い負担が大きくて自転車操業状態だった。
- 近くに大型ショッピングセンターができてから、うちの実家のスーパーは自転車操業でかろうじて倒産を免れている。