「あどけない」の意味
「あどけない」とは、「無邪気である」「邪心がなくかわいらしい」という意味の言葉です。特に、幼い子どもの様子を指して使われます。
人は成長するにつれ、さまざまなことを考えるようになります。損得勘定に基づいて意思を決定したり、他人の言葉の裏を読んだり、疑いや打算をもって人と付き合ったりするようなこともあるでしょう。
そのような「世間の垢」とでも言うべき社会常識や一般通念にまみれず、目の前の物事に純真なまなざしで向かい合う幼い子どもを連想させる態度のことを、「あどけない」と表現します。
「あどけない」の使い方
「あどけない」は、「あどけない顔」「あどけない笑顔」「あどけない少年」など、眼に見えて「無邪気でかわいらしい」という人間の態度・様子・しぐさなどについて使います。
性別・年齢に応じた明確な使用基準はありません。年を取った成人であっても、ふと気を抜いた時に見せる素の表情や、無防備な寝顔などは、「あどけない」と形容されることがあります。
どんな人間も最初は「あどけない子ども」だったのであり、たとえ社会的に「大人」と見なされていても、童心や幼児性はある程度その人の内部に残留すると言うことができるでしょう。
「あどけない」のイメージについて
「あどけない」は、基本的には「善性」「けがれのなさ」「裏表のなさ」「作為のなさ」を表すイメージであり、気取らず飾らず、素直でありのままの様子を形容します。
しかし、それは裏を返せば「世間知らず」ということでもあります。素直であるがゆえに「方便や建前を理解できない」「常識にうとい」ということもであり、「あどけなさ」は「社会性のなさ」というイメージもあるのです。
「あどけない」が「子どもっぽい」と似たようなニュアンスであると考えれば、(言われる側にとって)必ずしも良いイメージでないことがわかりますね。基本的には良い文脈で用いられる言葉ですが、念のため留意しておきましょう。
例文
- 幼稚園の園庭では、あどけない顔をしたこどもたちが声を立てて走り回っている。
- 彼女のあどけない笑顔は、いつもわたしを穏やかな気持ちにさせてくれる。
- 彼は二十歳という年齢にしては顔立ちが幼く、まだ高校生のようなあどけなさが残っていた。
「あどけない」の語源
「あどけない」の語源は、古語に見られる「あどなし(あどない)」(意味:無邪気である、子どもっぽい)と考えられています。「け」は「気」とみられます。
ただ、「あどなし」の由来は明らかではありません。一説には、「足跡(あど)なし」、つまり足元が定かでない、子どもの足運びがふらふら不安定であることを表したのではないかと言われています。
小さな子どもが明確な意思のもとでどこかへ向かうのでなく、足が動くに任せてふらふら歩いている姿を思い浮かべると、確かに現代で言う「あどけない」の意味に通じるものがありそうですね。
「あどけない」の類語
「あどけない」の類語としては、以下のような言葉が挙げられます。
【主に「かわいい」意】
- 愛らしい
- 愛くるしい
- 幼気(いたいけ)ない
- 愛(う)い
- 可憐
【主に「けがれがない」意】
- 初心(うぶ)
- 天真爛漫
- 純真無垢
- 天衣無縫
- 清純
- 無垢
- 素朴
「あどけない」を英語で言うと
「あどけない」を英語で言いたい場合は、以下の単語を使います。
- childish…(主に大人が)子どもっぽい
- artless…飾らない、素朴な、無邪気な
- innocent…無垢な
このうち「childish」は、「大人のくせに子どもっぽい(大人げない)」というけなし言葉としても使われますので、使用には注意が必要です。
「artless」は「非技巧的な誠実さ」、「innocent」は「無垢、けがれない」のニュアンスですので、良い意味で使えます。
例文
- "You are so childish" she said.(あなたはとても幼稚ね、と彼女は言った)
- She is an artless girl.(あどけない少女)
- When I came home, my wife greeted me with an innocent smile.(私が帰宅したとき、妻があどけない笑顔で出迎えた)