「メタモルフォーゼ」の意味
「メタモルフォーゼ」とは「変身、変化」という意味の言葉です。生物学用語では、「変態」(昆虫などが成体になるまでに形態を変えること)の意味です。
「メタモルフォーゼ」は英語とドイツ語でそれぞれ「metamorphose」と綴りますが、これを「~フォーゼ」のように読むのはドイツ語由来です。(英語読みでは「メタモルフォーズ」)
ギリシャ語やラテン語にも綴りと意味がほとんどそのまま確認できる単語であり、神話の時代から「姿が変わること」を表す、長い歴史を有する言葉です。
「メタモルフォーゼ」の使い方
「メタモルフォーゼ」をそのまま「変身」という意味で日常会話の中で使用することはほぼないでしょう。多くは「変身」という意義素をひとつの象徴として扱った固有名詞(イベント名、店舗名、商品タイトル等)として用いられています。
それ以外では、「変身」というテーマやコンセプトを扱ったアニメ作品やファンタジー作品内の設定、セリフなど、サブカルチャー関連で見聞きすることがあるかもしれません。
古典文学の世界でも変身という要素を扱った物語は多く存在し、「人や動物が姿を変える(そして、何らかの能力を得、世界との付き合い方が変わる)」といったお話の類型は、本邦を含め世界中に存在します。
使い方
- 「輝かしく変身してほしい」という願いをこめて、新しい服飾ブランドに「メタモルフォーゼ」と名をつける。
- 新放送の子ども向けアニメでは、ヒロインが「メタモルフォーゼ!」の掛け声とともに姿を変え、怪物たちと戦う。
- 日本では狸が人に化けるっておとぎ話があるけど、あれもメタモルフォーゼの一種だろう。
- ほとんどの昆虫は、青虫が蝶になるように、成長の過程でメタモルフォーゼ(変態)を行う。(※生物学用語)
「メタモルフォーゼ」の類語
「メタモルフォーゼ」の類語としては、以下のような言葉が挙げられます。
- トランスフォーム(Transform)
- シェイプシフト/シェイプシフティング(Shapeshifting)
- 化ける
- 変化(へんげ)
これらの言葉に大きなニュアンスの違いはありません。しかし敢えて踏み込むならば、「メタモルフォーゼ」は外面だけではなく内面(精神性)まで含めてすべてがいったん水のような不定形の何かに変わり、その後新たな形を獲得するというイメージを伴うことがあります。
「メタモルフォーゼ」の例
最後に、神話や文学など創作物に見られる「メタモルフォーゼ」の例を3つだけご紹介します。
カフカ『変身』
現代文学で「メタモルフォーゼ」と言えば、フランツ・カフカ作の『変身』(ドイツ語:Die Verwandlung、英語:The Metamorphosis)が最も著名かもしれません。
ある朝目覚めると虫の姿に変身していたサラリーマン、グレゴール・ザムザの戸惑いと、家族との奇妙な生活・確執を描いたこの作品は、「カフカ的」という言葉を生み出すほど現代社会の「不条理」を鮮烈に浮き彫りにしたことで評価されました。
初出は1915年ですが、社会や家族との関係において自己がどのような存在でいることが求められるのか、というテーマは、現代社会にも通底するものがあります。
ギリシャ神話「メドゥーサ」
ギリシャ神話には「メドゥーサ」という名の怪物が登場します。髪の毛が蛇になっているこの恐ろしい風貌の怪物に睨まれると、恐怖のあまり石になってしまうと言い伝えられています。
そんなメドゥーサですが、もともとは美少女でした。ところが、海神ポセイドンと不貞を働いたためにアテナの怒りを買い、醜い怪物の姿に「メタモルフォーゼ」させられてしまったのです。
このように、神話や物語の世界では「メタモルフォーゼ」が本来の形質を失わせる罪や罰の象徴として描かれることもあります。逆に言えば、その人が本来あるべき形(貞節を守ること等)を逸脱することは罪である、という教訓が変身の物語に込められていると言えるかもしれません。
ポケットモンスター「メタモン」
任天堂によるゲーム『ポケットモンスター』シリーズに、「メタモン」というポケモン(架空の生物)が登場します。
「へんしんポケモン」と分類されているメタモンは、その分類の通り「変身」能力を持ち、ほぼあらゆるものに変身することができます。本来の姿は、紫がかったスライム状の生き物であり、身長は30cm、体重は4kgです。
名前の由来は、言うまでもなく「メタモルフォーゼ」です。