「思考を巡らせる」とは
腕組みをしながら、また、頬杖をつきながら、物思いにふけっている人を見たことはありませんか?いったい何を考えているのでしょうか?
「思考を巡らせる」は、このような様子から、「あれこれといろいろな事を考えること。いろいろな事に頭を働かせること」を意味する慣用表現です。次に、この慣用句を構成する「思考」と「巡らせる」について見ていきましょう。
「思考」の意味
「思考」の意味は、大きく分けると次のようになります。
- 考えること。経験や知識をもとにいろいろと頭を働かせること。(思考を巡らせる。思考力が高い。思考回路)
- (哲学において)人間の知的精神作用の総称。
- (心理学において)感覚などを概念化して、判断、推理する心の動きや機能。
「思考を巡らせる」の「思考」は、この1の意味です。
「巡らせる」の意味
「巡らせる」の意味は、大きく分けると次のようになります。
- 周りを囲ませる。(フェンスを家のまわりに巡らせる)
- 回転させる。回す。(頭〈こうべ〉を巡らせる)
- あれこれと心を働かせる。(思いを巡らせる)
- ふれまわって知らせる。
「思考を巡らせる」の「巡らせる」は、この3の意味です。
「思考を巡らせる」の使い方
- 彼はゆっくりとコーヒーを飲みながら思考を巡らせています。
- 私は夜汽車に揺られ車窓の外を眺めながら思考を巡らせています。
- 思考を巡らせているといつの間にか夜明けとなってしまった。
- 思考を巡らせているうちに良いアイデアが浮かんできました。
- 私の恩師はいつも教え子たちのことに思考を巡らせ気にかけています。
「思考を巡らせる」の類語
「考えを巡らせる」
「考えを巡らせる」とは、「いろいろと考えること。頭を働かせること」という意味です。いろいろなことを考えている様子が似通っています。
【例文】
- 彼は自分の就職先について考えを巡らせている。
- 私は研修担当であるので会社の視察研修の内容に考えを巡らせています。
「思索にふける」
「思索にふける」とは、「筋道をたてて深く考え、熱中し没頭すること」という意味です。この言葉は「筋道をたてながら熱中しているさま」に重点がおかれています。「思索に耽(ふけ)る」とも表記します。
【例文】
- 彼は思索にふけるため静かな場所を探しています。
- いつも社長は思索にふけっていますが、社員は忙しく働くばかりです。
「頭を働かせる」
「頭を働かせる」とは、「物事をよく考えること」という意味です。「頭を働かせながら、よく考えているさま」が、「思考を巡らせる」と似通っています。
【例文】
- 今回のプロジェクトには頭を働かせることが多くあります。
- このイベントは失敗が多く、もっと頭を働かせるべきでありました。
「思考」を使った用語
「水平思考」
「水平思考」とは、「問題を解決するために、既成の理論や概念にとらわれず、視点を次々と変えて問題解決を図る思考方法」です。1967年頃マルタの医師であり心理学者でもあるエドワード・デボノが提唱したものです。
「垂直思考」
「垂直思考」とは、「常識にとらわれ一定の枠から抜け出すことのできない硬直した思考方法」、または「一つの視点を深く掘りさげる論理的な思考方法」です。「水平思考」と対極をなす言葉です。
「思考経済」
「思考経済」とは、「できるだけ多くの事実を少ない思考により記述することを目標にする」ということです。
14世紀の哲学者であり神学者でもあるイギリスのオッカムが提唱した「存在は必然性なしに増加されてはならないという原則」が源流となり、19世紀末にオーストリアの物理学者であり哲学者のマッハらによって広まった考え方です。
「思考経済の原則」「思惟(しい)経済の原則」「節減の原則」などと呼ばれています。
「思考実験」
「思考実験」とは、「理想的な実験方法などを想定し、そこで発生すると考えられる現象について論理的に追求する」ことです。アインシュタインの「同時刻の相対性、等価原理」や、ハイゼンベルクの「不確定性原理」などが思考実験で導き出されたことは有名です。