「一考の余地」とは
「一考の余地」とは、何かについて一度よく考えてみたり、考えたことを見直すための余裕や機会ということです。
「一考」とは、一度熟慮検討することです。「余地」は、ここでは「物事を行ったり考えたりする余裕。ゆとり」という意味で用いられています。
「余地」は物理的に「空いている土地」を指すこともありますが、比喩的に「（心の）ゆとり、場所、スペース」といったニュアンスも持ち、これが上記の「余裕」という意味につながっています。
「一考の余地」の使い方
「一考の余地」は、将来の計画や現に進行している物事などのほか、人の考えや思いについても使われること多く、その際には「（○○について）一考の余地がある（ない）」という言い回しが一般的です。
また、ここでいう「余地」には、「時間的な余裕や感情的な余裕」と「内容について見直す点が残っている、あるいは残している」という両方のニュアンスが含まれています。
「時間的・感情的余裕」
計画に対し何らかの理由で変更が生じて、その変更を検討するのに十分な時間がある場合に使うことができます。また、物事を見直すかどうかの判断が人の気持ちに左右されるような場合にも用いられます。
【例文】
- 海外旅行先の国の政治情勢が不安定になったが、今ならキャンセル料がかからないのでプラン変更に一考の余地がある。
- 婚約者がリストラされたため、周りは結婚を延期したほうがいいと言うが、早く結婚したい私には延期など一考の余地もない。
「内容を見直す余地」
周到な計画を立てたものの、金銭面や人員面などのさまざまな事情で計画を見直すべき場合にも使うことができます。内容について再考する、またはその機会があるときなどが当てはまります。
【例文】
- 長い年月をかけて準備してきたスポーツ大会だが、諸般の事情で開催時期や規模について一考の余地が生じてきた。
- 卒業後は一部上場企業に勤めるつもりだったが、最近の世の中の動きを見ていると、そういう考え方には一考の余地があるように思えてきた。
「余地」に関する言葉
ここでは、「一考の余地」に近い言葉として「再考の余地」を紹介します。さらに、「～の余地」という言い回しを三つ挙げておきます。
「再考の余地」
「再考の余地」とは、「考えたことを、もう一度よく考え直すこと」です。「一考の余地」と同様に、時間的な面でも内容的な面でも使うことができます。
【例文】
- 急遽（きゅうきょ）来年度の事業計画を修正することになったが、今なら時間的に再考の余地がある。
- ゼミで卒業論文の要旨を発表したところ、教授から論理の展開について再考の余地があると指摘された。
「疑いの余地」
「疑いの余地」とは、まだ疑うことのできる何かという意味です。この言葉は「疑いの余地がない」という表現で使われることも多く、「これ以上疑いを差しはさむことができない」ということを表しています。
【例文】
- 状況証拠と物的証拠がこれだけ揃っているのだから、取り調べ中の被疑者が犯人であることは疑いの余地がない。
- 様々なデータに基づいて、近々、大きな地震が来ることは疑いの余地がないという地震学者もいるが、そんな予知が当たったことがあっただろうか。
- 検査の結果は陰性だが、臨床症状からは、まだ感染症の疑いの余地がある。
「弁解の余地」
「弁解の余地もありません」という言い回しは、不祥事を起こした会社の謝罪会見などで聞いたことがあるかもしれません。「弁解」は「いいわけ」を指し、「弁解の余地」を否定する形で「いいわけをする隙もない」といった意味合いです。
【例文】
- 報道発表した事実の誤りを指摘され、弁解の余地もありません。
- 今回の不祥事は、すべて私どもの管理不行き届きによるもので弁解の余地もありません。
「同情の余地」
「同情の余地」は、「同情の余地がない」という言い回しで、人物を批難するような場面で使われることが一般的です。
「同情」は、「相手の苦しみ・悲しみといった心情に、親身になって思いやり、労わる」ことです。そのような気持ちを持つ心の場所（ゆとり）を「同情の余地」と言います。
【例文】
- 立派な公約を掲げて当選したのに、まともな政治活動をせず、不正疑惑で逮捕された○○議員には同情の余地もない。
- 飲酒運転で事故を起こし、さらに現場から逃げたというAには同情の余地もない。