「鼻腔をくすぐる」の意味
「鼻腔(びくう・びこう)をくすぐる」とは、何かの匂いや香りが刺激となり良い気分になることです。「鼻腔」は、鼻の穴から喉に近い部分までの空洞のこと、「くすぐる」は、人の心などを刺激して、じっとしていられないこと、気分が良くなることを言います。
「鼻腔」は、「びくう・びこう」などの読みがあります。「鼻孔」(鼻の穴)の場合も「びこう」と読むことから、取り違えないようにあえて「びくう」と読む方もいます。また、医学の世界では慣用的に「びくう」と読んでいます。
「鼻腔をくすぐる」の使い方
「鼻腔をくすぐる」は、香りを良いと感じたり、匂いを漂わせている人や物について良い印象を持っていたりする場合に使われます。悪臭、嫌な人や物事に関する香りには使われません。
良い香りが漂う
「鼻腔をくすぐる」は自然の香り、人工的な香りに関わらず使えます。良い香りが周囲に漂っていて気分が良くなる、リフレッシュされるような気持ちになるような意味合いです。
【例文】
- タオルで顔を拭くたび、柔軟剤のカモミールの優しい香りが鼻腔をくすぐる。
- 窓を開けた瞬間に、レモングラスの爽やかな匂いが鼻腔をくすぐった。
好ましい人物を思い出させる香り
人の好みはある程度決まっているので、ある香りがすると自然とその人のことを思い出されることもあります。自分にとって好ましい存在の人が使っている香りがして、色々な思いが湧く時に「鼻腔をくすぐる」が使える場合があります。
【例文】
- 整髪料の匂いが鼻孔をくすぐり、亡くなった祖父との思い出が蘇った。
- 柑橘系のシャンプーの香りが鼻腔をくすぐり、友人に用事があるのを思い出した。
好きな飲み物の香りで落ち着く
コーヒーや紅茶など、湯を沸かして入れるタイプの飲み物は、良い香りが周囲に広がります。好きな飲物の匂いがして気分が落ち着くなど、気持ちが良い方向に切り替えられた時に「鼻腔をくすぐる」が使えます。
【例文】
- 喫茶店のマスターがドリップする時に、コーヒーの香りが鼻腔をくすぐった。
- フルーツが入ったフレーバーティーは、口にする前から鼻腔をくすぐられる。
美味しそうな匂いがしてお腹が空く
調理中の時、お菓子の封や箱を開けた時、美味しそうな匂いが周囲に広がります。その食べ物の匂いで美味しそうと感じてお腹が空いた場合、「鼻腔をくすぐる」が使えます。
【例文】
- 厨房のデミグラスソースの匂いが鼻腔をくすぐり、早くハンバーグを食べたいと思った。
- クッキーの袋を開けると、バターの香りが鼻腔をくすぐった。
- チャーハンを作る時の醤油やごま油、ネギの香ばしい匂いが鼻孔をくすぐった。
「鼻腔をくすぐる」の反対表現
「鼻腔をくすぐる」とは逆に、苦手もしくは嫌な臭いがして気分が悪くなる意味合いの言葉を紹介します。
スメハラ(スメルハラスメント)
人によっては好ましい匂いでも、他の人にとっては匂いが強すぎて辛い、もしくは嗅いでいると気分が悪くなることもあります。このような状態で職場の人を不快にさせていることを「スメハラ(スメルハラスメント"smell harassment”の略、和製英語)」とも呼ばれます。
「スメハラ」は匂いで嫌がらせするハラスメントの一種で、当人にその気はなくても人に迷惑を及ぼすもとになります。締め切ったオフィスで、香水や柔軟剤の強い匂いが充満して体調が悪くなった例もあり、退職に追い込まれるなどの社会問題ともなっています。
【例文】
- 部下からスメハラだと抗議を受けたため、無香料の洗剤と柔軟剤に変えた。
- お客様から「窓口の女性の香水の匂いがきつい。一緒に働いている人にスメハラをしているように思える」とクレームがあった。
鼻につく
「鼻(はな)につく」は、人の性格について嫌味なことを言う様子や振る舞いがしつこくて嫌になる、飽きたといった意味合いで使われることが多いです。
もともとの意味は、嫌な匂いがつきまとう感じがして不快になることです。そのような意味合いであれば、「鼻腔をくすぐる」と反対のことを表す言い回しになります。
【例文】
- 彼のやることなすこと鼻についてすごく気分が悪い。
- 室内の煙草の臭いが鼻について、食事が楽しめなかった。
- コンサートで隣に座った人の香水が鼻について苦痛だった。