「微動だにしない」とは
「微動だにしない(びどうだにしない)」とは、「全く動かない」「微動すらしない」「全く動じない」「全く動揺しない」という意味を表現した言葉です。
人や生き物や物などが、物理的に全く動かない様子。人や動物が遭遇した物事に対して、パニックになったり動揺したりすることなく、平然としている様子を表現する時に使われます。
「微動だにしない」は、「微動」「だに」「しない」から成る連語で「微動もしない」を強調した言い回しになります。
「微動」
「微動」には、「かすかに動くこと」「少しずつ動かすこと」「かすかに動揺すること」という意味があります。
「だに」「しない」
「だに」は、古語の副助詞で、以下のような意味があり、「微動だにしない」は2の意味で用いられています。
- せめて~だけでも:主に、願望・命令・意志などの表現を伴い用いられる。
- ~さえ/~でさえ:主に、下に打消しの表現(「しない、ない」など)を伴い用いられる。
〈その他の主な使用例〉
- 一顧(いっこ)だにしない:全く振り返らない。
- 一瞥(いちべつ)だにしない:全く見ない。
- 想像だにしない:全く想像しない。
- 考えだにしない:全く考えもしない。
- 夢だに思わない:夢にも思わない。
「微動だにしない」の使用例
- 彼は微動だにしないで、去って行く彼女を見送っていた。
- 社長は窓の外を向いたまま、手を背後に組んだまま微動だにしない。
- 新幹線から見る富士山は、微動だにせずそこにある。
- 周囲から何と言われようと、彼の信念は微動だにしない。
- 株価の暴落にも微動だにしないメンタルが、投資家には必要だ。
「微動だにしない」の類義表現
【人や動物や物などが全く動かない、動きを見せないさまの表現】
- 動く気配すらない
- 不動の
- 静止した
- 小揺(こゆ)るぎもしない
- ピクリともしない
- ピクリとも動かない
【動揺する物事に遭遇しても平然としているさまの表現】
- 腰が据わった
- 地に足がついた
- たじろがない
- ブレない
- 落ち着き払った
- 物怖じしない
- 尻込みしない
- 強心臓の
- 肝の据わった
「微動だにしない」と同様な意味の四字熟語
「微動だにしない」と同じ様な意味を持つ、四字熟語には以下の様なものがありますが、日頃からよく使われるものとしては1と2ぐらいでしょうか。
- 「泰然自若(たいぜんじじゃく)」:何があっても慌てず騒がず、動揺しないこと
- 「直立不動(ちょくりつふどう)」:真っ直ぐに立ち、微動だにしないこと
- 「安如泰山(あんにょたいざん)」:泰山(中国山東省にある名山)の様に、微動だにしない安定した様を言う
- 「湛然不動(たんぜんふどう)」:静かに落ち着いて揺るがないこと
- 「従容自若(しょうようじじゃく)」:ゆったりとして落ち着き払い、心の動じない様子
- 「鷹揚自若(おうようじじゃく)」:どっしり落ち着いて動じないこと
- 「神色自若(しんしょくじじゃく)」:内心や外見が落ち着いて、物事動じないこと
「微動だにしない」を英語で
「微動だにしない」を英語にすると、「wouldn't budge」や「won't budge」で表現することができます。「(ちょっと)動く/身動きする」という意味がある「budge」を否定する形です。
「wouldn't(would not の短縮形)」「won't (will not の短縮形)」は、「~しない/~ではない/~できなかった」という意味の否定形になります。
〈使用例〉
- He wouldn't budge an inch.(彼は微動だにしなかった。)
- He wouldn't budge from his opinion.(彼は自分の意見を変えようとはしなかった。)
- The door won't budge an inch.(ドアはピクリともしなかった。)
「微動だにしない鳥」
「微動だにしない鳥」に「ハシビロコウ」(記事初頭の写真の鳥)と言う名前の鳥がいます。アフリカのウガンダなどに生息している、大型(体長約1.2m)の鳥です。
銅像の様にじっとしています。好物の魚が水面に上がってきた時に捕らえるため、気付かれない様に待ち伏せしているそうです。上野動物園の他いくつかの動物園で見ることができます。