「身に余る」とは?
「身に余る」(みにあまる)の意味は以下の通りです。
- 自分の実力や能力などが評価されすぎている
- 責任や負担が大きすぎて自分ではやり通すのが難しい
「身」は「自分自身」のこと、「余る」は「~に余る」という形で、「能力や程度が実際よりも非常に高すぎる」といったことを表しています。
「身に余る」の使い方
「身に余る」の意味を考えると、どことなくネガティブで自分に自信がない雰囲気がしますね。しかし、他人が相手の人柄や能力を悪く評価するニュアンスでは使われません。
話し手の本人が「身に余る」と感じるといったように、仕事などの場で目上の方に対して、謙遜して自分の立場を低める謙譲語に近い用い方をします。「どうせ自分なんて」と、後ろ向きの姿勢で使う語句ではありません。
上司や取引先、お世話になっている目上の方と会話をするだけでなく、文書や手紙、メールなどの書き言葉でも使えるビジネス用語です。場面ごとに使われ方を紹介します。
目上の方に感謝する
感謝されたり、ねぎらいの言葉をかけられたりした場合、褒められたり激励されたりした時に、お礼の言葉を返しますね。特に、上司や取引先などの目上の方にありがたい言葉をいただいた時に、敬語を使って丁寧に応対するでしょう。
「身に余る」を使って感謝の気持ちを表すと、相手に「自分のような人間に過ぎるほどのお声がけをいただき」といった謙遜の気持ちが伝わり、より丁寧に感じられます。
【例文】
- 身に余るお言葉を頂戴しまして、光栄に存じます。
- この度は身に余るお心遣いをいただき、心よりお礼申し上げます。
大役を引き受ける
責任を伴う業務を任されたり、大役に抜擢されたりする場合もあるでしょう。そのような大きな業務を引き受ける時に、「身に余る」を使う場合があります。
「(自分にとってやり遂げるのが難しい)身に余る仕事ではあるけれども」といった逆説の形で、難しくてもやり遂げるつもりという意欲を表します。本当に自信がないわけではなく、自分の実力をわざと低めて謙遜しているだけの場合がほとんどです。
【例文】
- 身に余る重責ではありますが、精一杯努力いたします。
- Aさんの後任は身に余る大役ですが、任期を全うするつもりです。
辞退する際のクッション言葉
「身に余る」は、目上の方への申し出を断ったり辞退したりする時にも使えます。相手の立場が上の場合には「できません」とむげに断ると角が立って、相手との関係にひびが入ることも考えられるでしょう。
「身に余る」を使うとクッション言葉になり、「せっかく自分のことを高く見積もって頂いても実際には能力がないので」とか「自分には負担が大きすぎて全うするのが困難なので」という意味合いが入り、辞退する際にも当たりが柔らかくなるでしょう。
【例文】
- 誠に申し訳ございません。身に余るお話ですが、私にはこなせそうにありません。
- 経験不足の私には身に余る大役ですので、辞退させてください。
「身に余る」の類語
「分不相応」
「分不相応」(ぶんふそうおう)は、対象となる人の身分や地位を超越していてふさわしくないこと、能力が足りていないこと、役割や立場から見てふさわしくないことという意味です。
自分自身ではなく他人の様子を表すこともできるので、人を批判する言い回しで使われることもあります。
【例文】
- 分不相応な贅沢をして、カードの支払いがきつい。
- 小さい子供にブランド品は分不相応です。
「過分」
「過分」(かぶん)は、過ぎた扱いを受ける、実力以上に厚遇されるといった意味を持っています。「身に余る」と同様に、目上の方に謙遜しながら感謝の気持ちを伝える使い方もできます。
【例文】
- 過分なお褒めの言葉をいただき、もったいない気持ちでいっぱいです。
- 過分なお祝いをいただき、ありがとうございました。
「身に余る」には含まれませんが、「過分」には、傲慢な振る舞いで思い上がっているという意味もあります。
【例文】
過去の実績から考えると彼の要求は過分と言わざるを得ない。