「痛し痒し」の意味
「痛し痒し」の意味は、「片方を立てれば、他方に差し障りが生じるという状態でどうしたらよいか迷う。どのようにしても、結局自分に具合の悪い結果になる」です。
語源としては、「(できものは)掻(か)けば痛いし、掻かなければ痒いままだし、どうしようもない状態」から来ています。このような状況を英語では「dilemma(ジレンマ)」とも呼びます。
「痛し痒し」の使い方
【例文】
- 実家に帰ってきたのは良いが、母の意見に賛同すると嫁の機嫌が悪くなり、嫁の意見に賛同すると母の機嫌が悪くなる。ほんとに痛し痒しの状態だ。
- 運動が苦手な私は参加すればクラスの足を引っ張るし、サボれば怒られるしで、痛し痒しなんだよね。
- 画期的な発明にはリスクがつきものである。リスクを避けるか、覚悟のうえで研究を進めるか痛し痒しだ。
- この校則を承認すれば保護者の皆さんは喜ぶが、生徒からは反感を買うだろう。どちらにすれば良いのか痛し痒しだ。
「痛し痒し」の類語
「あちらを立てればこちらが立たず」
「あちらを立てればこちらが立たず」は、片方の面目を保つように計らうと、もう一方の面目がつぶれてしまうことから、「両方が納得する・喜ぶようなことをするのはとても難しい」という意味を持ちます。
【例文】
- 兄弟げんかを鎮めたいのだが、あちらを立てればこちらが立たずで頭が痛い。
- 世の中全てがうまく行くことなど少ないのだから、あちらを立てればこちらが立たずの状態になったら自分の直感を信じよう。
- あちらを立てればこちらが立たずの状態が、かれこれ3時間近く続いている。
「彼方を祝えば此方の怨み」
「彼方を祝えば此方(こなた)の怨み(うらみ)」とは、どちらか片方を祝うともう一方からは怨みを買うという様子から、「両方にとって利のあるようにすることは難しい」という意味になります。
【例文】
- 妹の誕生日にケーキを買ってきたのだが、弟の機嫌がすこぶる悪い。まさに彼方を祝えば此方の怨みを体現している。
- 親友同士のけんかを仲裁するには片方の肩を持つことになり、彼方を祝えば此方の怨みとなってしまう。
- 姉妹を公平に褒めていたつもりだったが、彼方を祝えば此方の怨み状態になっていたようだ。
「右を踏めば左があがる」
「右を踏めば左があがる」は、「一方に良い事はもう一方にとっては悪い事であり、同時に良い事はない」という意味です。天秤(てんびん)を想像すると分かり易いのではないでしょうか。
天秤は片方に力を加えるともう一方は上がります。一方にのみ力を加えた状態では天秤の皿が同じ位置になることはありませんよね。
【例文】
- サッカーの観戦チケットが2枚あるのだけど、A君とB君どちらを誘ったら良いのだろう。右を踏めば左があがるとはこのことだよ。
- 円とドルの関係はまるで右を踏めば左があがるだね。
- 残業しないと仕事が終わらないし、残業すると早く帰れと言われるし、右を踏めば左があがるとはよく言ったもんだ。
「痛し痒し」を英語で
「痛し痒し」は、「be in a dilemma(ジレンマに陥っている)」が使いやすく意味も通るのではないでしょうか。他には「be faced with a difficult choice(選択するのに難しい状況に直面している)」と表記するのも良いでしょう。
【例文】
- Which opinion should I trust, my sister or my brother? It's like I'm in a dilemma.(妹と弟のどちらの意見を信じれば良いのだろうか。まるで痛し痒しの状態だ。)
- If you don't study, you get a red dot, and if you don't sleep, your cold gets worse, and you're in a dilemma.(勉強しないと赤点を取るし、眠らないと風邪が悪化するし、痛し痒しの状態だ。)