「彷彿とさせる」の意味
「彷彿(ほうふつ)とさせる」は、「髣髴とさせる」とも書きます。あるものが何かを連想させる様子、何かをありありと思い出させる様子を表すを表したことばです。
たとえば、「あの体操選手の演技は、彼の父親を彷彿とさせる」と言えば、「彼の父親のことが思い出される」という意味を表します。
このように、「彷彿とさせる」とは、Aを見ることによって性質や姿のよく似たBが思い浮かぶことを示す言葉です。関連するものが脳裏に浮かぶさまを言い表すときに使う言葉といっても言い換えてもよいでしょう。
連想したり思い出したりするのは、他の人や物でも構いませんし、同じ人や物の在りし日の姿でも構いません。また、ときには想起するのが抽象的なイメージだということもあるでしょう。
「彷彿とさせる」は「彷彿」というやや難しめの漢語が含まれているため、日常会話ではあまり耳にしません。ふだんは「思い出す」「連想する」といったより身近な言葉を用いた方が無難でしょう。
「彷彿」の意味
そもそも「彷彿」とは、ありありと思い出すという意味やよく似ているという意味を表すことばです。その他に、姿かたちがぼんやりと見える様子を表すこともあります。
「彷彿」という熟語を構成している「彷」、「彿」は目にする機会は少ないですが、ともに「とても似かよっている」という意味を持つ漢字です。
「彷」は、「彷徨(ほうこう)」という熟語で用いられることもしばしばです。この場合は、さまようという意味を表しています。
「彷彿とさせる」を含む例文
- 先日のOB戦で、先輩が全盛期を彷彿とさせるような動きを見せたのには正直驚かされた。
- 彼は、彼の父親を彷彿とさせるような言動を意図的に行うことで民衆の支持を取りつけようとした。
- 彼女の戯曲を読むと、かのシェイクスピアを彷彿とさせる才能が随所に感じられる。
いずれの例文でも、「彷彿とさせる」の部分を「思い起こさせる」や「連想させる」といった言葉に置き換えると、上手に意味を取ることができます。
連想させるものの種類は実にさまざまで、上から同一人物の過去、その人物の肉親、現在は生存していない過去の偉人です。
この中で最後の例文だけが、(おそらく)実際に見たことのない人物を想起しているため、他の例文よりも「想像」の部分が多く含まれています。
この場合、シェイクスピアそのものというよりも、それぐらい優れた戯曲家であることを例示していると考えるのが妥当でしょう。
「彷彿とさせる」の類語
- 想起(そうき)させる…思い出させる。
- 想像(そうぞう)させる…頭の中に思い浮かべさせる。
- 連想(れんそう)させる…関連のある他の観念を思い浮かべさせる。
- 脳裏(のうり)に浮(う)かぶ…考えなどが頭に現れる。
これらの類語でもっとも多く用いられている文字が「想」です。そして、この「想」には対象となる人や物のことを頭に思い描くという意味があります。
「彷彿とさせる」という表現同様に、その人の頭の中に具体的な人や物のイメージが描かれるという点がポイントです。
「彷彿とさせる」を英語で表現すると?
「~を彷彿とさせる」を英語で表現したもので代表的なのが、「be reminiscent of ~」です。
【例文】
- His talking style is reminiscent of his grandfather's.(彼の話し方は、彼のおじいさんを彷彿とさせる。)
- This is music that is reminiscent of 50's.(これは、1950年代を彷彿とさせる音楽です。)