「まどろっこしい」の意味
「まどろっこしい」とは、「遅くて手間取っている」「じれったい、はがゆい、いらだたしい」という意味の言葉です。「まどろこしい」とも言います。
「~しい」は、「おとなしい」「かわいらしい」などのように、主に名詞や動詞(未然形)について形容詞をつくる接尾辞ですが、では「まどろっこ」とは何でしょうか?「まどろむ」(眠い)は関係ありません。
実は、「まどろっこしい」の元々の形は「まだるっこい」であり、漢字では「間怠っこい」と書きます。
元は「間怠っこい」
「間怠っこい」は、形容詞「間怠い(目弛い)」が、「まだるい」→「まだるく」(連用形)→「まだる(っ)こい」と促音化したものと考えられています。(促音化とは、洗濯機を「せんたっき」と読むような変化です)
「間怠い」は、間が怠(だる)いこと、すなわち物と物の時間的間隔がのろいこと、物の様子がのろくさいこと、おっくうでしまりがないことといった意味です。
「間怠い」が「間怠っこい」に、それがさらに口語的に言いやすく「まどろっこしい」に変化したと考えると、言葉は生き物であるという金言が思い出されますね。
「まどろっこしい」の使い方
「まどろっこしい」という言葉は、主に他人の動作や言動、用いられている方法に対して、それが遅くてじれったい、要領を得なくてはがゆい、と言い表したい場合に使います。
単純に速度が遅いという場合の他に、てきぱきした動作・言動であっても、何をしているのか・何を言っているのかわからない、支離滅裂である、という場合でも「まどろっこしい」と言うことができます。
さらに一風変わった使い方として、相手の言動がきわめて明瞭かつ正当な場合であっても、それゆえ「みなまでいうな」「全部言わなくてもよろしい」のニュアンスで「まどろっこしい」が用いられることがあります。
漢字表記はない
上で述べたように「まどろっこしい」はもともと「間怠い」から来ていますが、「まだる」→「まどろ」と音そのものも変化しており、元の漢字を当てる慣習もありません。
「間怠い」が現在ではほぼ使われていないという事情もありますが、「まどろっこしい」は原則ひらがな表記で使いましょう。
例文
- 彼女、言葉遣いはとても丁寧だけど、ちょっとまどろっこしいね。もっとくだけた話し方でもいいのに。
- 君の作文だが、話題があちこち飛ぶせいで読んでいてまどろっこしい感じだよ。何を言いたいのか、大まかにでも整理してから書いたらどうかな。
- どうしてこの部署はこんなまどろっこしい方法を取っているんだ。ちゃんとした理由がないなら、もっと単純化した方法がいい。
- 恥を忍んで友人Aに助力を頼み、頭を下げたところ、「まどろっこしい!そんなにかしこまらなくても、いつでも頼ってくれよ。友達なんだから」とAは衒いもなく言った。
「まどろっこしい」の類語表現
ややこしい
「ややこしい」とは、事情や方法などが「こみいっている」「煩雑でわずらわしい」という意味の言葉です。
(言動・動作などが)「遅い」というニュアンスはありませんが、「要領を得ない」という点は「まどろっこしい」と似ています。
【例文】
- 君が口を挟むと話がややこしくなる。ちょっと黙っていてくれないか。
- ややこしい手続きだった。もう二度とやりたくない。
冗長
「冗長」(じょうちょう)とは、「無駄があったり、手順がまずかったりして、くどく長たらしいさま」という意味の言葉です。
こちらも「遅い」という意味は直接には含まれていませんが、効率的・合理的でない手続きによる「不必要な遅さ」のニュアンスがわずかに含まれているといえます。
【例文】
- 冗長な文章だ。要点をまとめたまえ。
- あのドラマはストーリーが冗長で退屈だ。