「手ずから」の意味
「手ずから(でずから)」は、日常会話を始めとして、現代社会ではあまり耳にする機会が少ない言葉かもしれません。
漢字とイントネーションからおおまかに意味を想像できる方もいるかもしれませんが、「手ずから」には以下のような意味があります。
- 直接自分の手を使って・自分の手で
- みずから・自身で
これらの意味を言い表したい場合、一般的には「自ら(みずから)」という言葉が頻繁に使われています。が、古き書物などには「手ずから」という言葉がはよく使われています。
「手ずから」の使い方
【例文】
- お嬢様が手ずから編んでくださったマフラーは、私にとって一番の宝物である。
- 義父が手ずからお酒をついでくださったので、緊張してグラスが震えていた。
- 担任教師が手ずから作ってくれたイナゴの佃煮を、私たちは美味しく味わった。
これらの例文を見てわかるように、今では「手ずから」は目上の方に使う言葉と捉えられています。古典などでは「御手ずから」と記されていることもあり、そこから現在の使い方に至ったと推測されます。
「手ずから」の語源
「手ずから」は、「tizqalu」というアッカド語が語源ではないかとされています。「tizqalu」には「高貴な人が自ら~」という意味があり、この文字の読み方から「手ずから」という言葉が出来たと考えられています。
アッカド語とは、紀元前3000年から紀元頃までメソポタミアで用いられていた言語です。シュメール語の影響を受けていたとされ、楔形文字が用いられています。
他にも、「手」と、格助詞の「つ(ず)」(「~の」)、助詞の「から」(動作の発生元を示す)から来ているという説があります。
「手ずから」の類語
「手を下す」
「手を下す」には「自らことを行う・直接自分で行う」という意味があります。
【例文】
- この事件に関して直接手を下したのは彼だが、裏で意図を引いていたのは彼の妻の方だ。
- 時間が余っているなら、他人に仕事を頼むのではなく自分で手を下した方が早いんじゃないかと注意した。
- 彼女が手を下したのは本人にとって彼が邪魔だと判断しての事だろう。手を下された彼はというと暫く茫然自失になっていた。
「自ら」
「自ら」は、「自分自身・他の人の力を頼らずに自分の力で行うさま」という意味があります。
【例文】
- 主将自らが先頭に立ってチームを鼓舞したおかげで、難しい試合に勝利する事が出来た。
- 時間が余ったので友人の課題を見てあげようとしたが、自らの力で完成させると固辞したため見守ってあげることにした。
- 相手チームから強烈なパンチを食らった彼はダウンを喫したが、自らの力で立ち上がり逆転への口火を切る猛攻を見せた。
なお、読みが似た言葉に「自ずから(おのずから)」がありますが、根本的に意味が異なります。「おのずから」は「自然に・ひとりでにそうなる」という意味を持ち、「自分自身で」という意味の「自ら」とは別の言葉です。
「手ずから」を英語で
「手ずから」を英語で表記する場合は「in person」(直接、自分で)や「oneself」(自分自身で)、「personally」(個人的に)などの表現が適切です。
例文
【例文1】
- I was very nervous when the Queen went to herself my house and congratulated me.
- 女王様が手ずから私の家にいらっしゃり、祝福して下さったのでとても緊張してしまった。
【例文2】
- I was grateful for the material that my teacher made by himself using his free time.
- 先生が暇な時間を使って手ずから作ってくれた資料をありがたく頂戴した。
【例文3】
- I can't wait to hear that a famous scientist will hold himself his class.
- 有名な科学者が手ずから授業を開いてくれると聞いて楽しみで仕方がない。