「間口を広げる」とは?
「間口(まぐち)を広げる」とは、領域を広げるという意味です。主に事業や研究において、その領域を限定することなく手広く行うことをさします。
本来、「間口」とは土地や家屋について用いられる建築用語です。それが「間口を広げる」という言い回しで比喩的に使われるようになりました。
「間口を広げる」という言葉が建築、不動産の話題の中で使われているのであれば本来の物理的な意味です。それ以外の場で用いられていれば、関係する分野の「領域の拡大」を示すことになります。その使い分けをよく確認しておきましょう。
「間口が広い」を人物を評するのに使うケースがあります。「間口の広い人」という言い回しは、「手広く事業を展開している人」や「博識な人」と同じ意味を持つ褒め言葉ですので、ぜひ会話に取り入れてみてください。
建築用語における「間口」
本来の用法、建築用語での「間口」について、簡単に説明しておきましょう。「間口」とは、敷地の道路境界線に接した長さ、もしくは建物の道路側に面する長さを指す言葉です。
道路に面する道の長さには、「間」(1間はほぼ1.8m)という単位を用いたことから「間口」という表現が使われるようになりました。
道路に直角な方向の長さのことは、奥行きといいます。また、マンションなどの共同住宅では、バルコニーに面した部分の幅を「間口」と言います。
「間口を広げる」の用例
- お子様向けメニューの種類を増やして、子連れ客への間口を広げよう。
- アルバイト採用の間口を広げるためには、学業との両立が可能であることをアピールする必要があるだろう。
- 英語だけでなくマルチリンガルなガイドを増やすことで、外国人旅行者の間口も広がると思う。
- 商売の間口を広げるために、ネット通販を始めてみた。
- なかなか理想の人に出会えないのなら、条件ばかりを並べるのではなく間口を広げてみてはどうだろうか。
「間口」の使われ方の変化
「間口」は建築用語のひとつで、厳密には道路に接する土地や建物の長さ、つまり道路側から見た土地や建物の幅を意味します。
しかし実際には、「玄関の間口」や「キッチンの間口」などのように、単純に「幅」や「領域」をさしているケースも少なくありません。
いつ頃から「間口」がこのような使われ方をし始めたのかは不明ですが、この変化が「間口を広げる」という表現につながったことは間違いありません。
そして建物を人に置きかえた時の出入り口の部分、つまり自分が関わったり受け入れたりできる領域を「間口」にたとえ、「間口を広げる」と表現するようになったと考えられます。
建築用語の「間口」に対する語は「奥行」です。「奥行」とは、敷地や建物が前面道路に接する境界線から反対側の隣地境界線までをさします。
「奥行」という言葉も人に対して使われることがあります。博識である人や思慮深い人、包容力のある人などをさして「奥行きのある人」と表現します。
「間口を広げる」の英語表現
「間口を広げる」という言い回しは日本特有のものなので、英語で表現する際は、「間口」を「領域」や「範囲」と言う言葉に置き換えると良いでしょう。「領域」や「範囲」などの意味を持つ単語は「scope」です。
また「広げる」と表現するには、「broaden」や「expand」などの単語を用います。”broaden(またはexpand) the scope of~”という表現が、ちょうど日本語の「間口を広げる」に当てはまります。
<事業の間口を広げる>
- broaden the scope of one's business
- expand the scope of one's business
「broaden」と「expand」ですが、どちらを使っても大きな違いはなく意味も十分に伝わります。
両者の違いをさがすとすれば、「broaden」は「視野」や「経験」あるいは「関係」など目に見えない、数値化できないものについて使われることが多いということです。一方、一般的な「範囲」を広げる時に使われる単語が「expand」です。