「手のひら返し」とは?
「手のひら返し」(てのひらがえし)とは、「それまで取っていた態度をがらりと変えること、正反対の対応を取ること」という意味の慣用表現です。
例えば、Aという案をいつも支持していた人が、A案の形勢が悪くなった途端、対案であるB案の支持者に変わったとしたら、その人は「手のひら返し」をしたと言えるでしょう。
「手のひらを返す」、「手の裏を返す」、「掌(たなごころ)を反(かえ)す」とも言います。
「手のひら返し」の由来
「手」は、人間のさまざまな動作やジェスチャーの中心です。また、「手中にする」「手を切る」などの言葉からもうかがえるように、「手」には「大事なものを取り扱う部位」というイメージがあります。
ここから、手のひらをくるりとひっくり返すようにものの扱い方を急に変える、「手のひら返し」という慣用表現が生まれたと考えられています。
「手のひら返し」の使い方
「手のひら返し」は、誰かが急に態度を変えるさま、変えたさまを指し、それを非難する意図で使います。
「急に態度を変える」だけのことであれば、良い方向へと変化することもあるでしょう。
しかし、「手のひら返し」には、「態度が一貫していないさま」「自分に都合よく意見を変えるさま」「二枚舌である」「嘘つきだ」といった批判的なニュアンスが込められており、良い意味で使われることはありません。
安易に使用しないように注意
「手のひら返し」は人間の「態度」に注目した表現ですが、人間のすべての心理や思考が「態度」として現れるわけではありません。他の人間から観察される「態度」は、その人のほんの一部分にすぎません。
しかし、ある人の発言や振る舞いのごく一部、些細な言葉の綾を捉えて、「以前と態度が違う。手のひら返しだ」と使われるケースも現実には少なくなく、批判を目的とした一種のレッテル張りのようにこの言葉が使われることもあります。
「態度」が、裁判での証言や科学論文ほどの信憑を持たない以上、一方的な評価・決めつけとして「手のひら返し」が使用されることも致し方ないといえますが、要らぬトラブルを招かないためにも、安易な使用には注意したほうがよいでしょう。
例文
(A)
最初はみんな〇〇がいいって言ってたのに、△△が注目された途端、みんな手のひら返しで△△ばかりに夢中になった。
(B)
みんな私に冷たかったくせに、私が成功してお金持ちになったらすり寄ってきて…。手のひら返しもいいとこね。
(C)
あの政治家、選挙の時はあんなに強気な姿勢だったのに、当選したら手のひら返して「そんなことは言っていない」だもんな。票入れるんじゃなかったよ。
「手のひら返し」を英語で言うには?
単語だけの翻訳はNG
「手のひら返し」のような慣用表現を外国語に訳す場合、単語をそのまま翻訳するだけではその言葉が持つニュアンスが伝わらない点に注意が必要です。
例えば、「手のひら」を英語では「palm」と言いますが、これには「(覆い)隠す、いかさま」という意味があり、「palm」を「返し」=「turn」ても、「急に態度を変える」という意味にはなりません。「turn hand」(手を返す)でも同様です。
「手のひら返し」の英語表現
「手のひら返し」を英語で言いたい場合には、以下のように英語ならでは慣用表現を使いましょう。
- flip-flop(反転する、態度を急変させる、意見を真逆にする)
- change one's tune / sing another tune(態度をがらりと変える)
- one-eighty(180)(意見が180度変わる)
二行目に登場する単語「tune」には「音色、調べ」の他に「心の気分、調子」という意味があり、心の変調を「態度を変える」という意になぞらえているわけですね。
最後の「one-eighty」はかなりくだけた表現ですが、文字通りに「180度、すなわち正反対(を向くこと)」を表しています。
例文
- I know it's a flip-flop in his attitude.(彼が手のひら返ししたのを知っています)
- He will change his tune when he finds this.(これを見たら彼は手のひらを返すだろう)
- President did a 180.(大統領は手のひら返しした)