「禁じ得ない」とは?
「禁じ得ない(きんじえない)」は、ある感情がどうしてもこみあげてくること、湧き上がってくる思いや感情にまつわる表現を抑制できない、という意味の言い回しです。「~を禁じ得ない」というかたちで用い、「~」の部分には感情をあらわす言葉が入ります。
硬い表現であり、日常会話で用いられることはほぼありません。会話で使われるとすれば、冗談めかして口にするケースがあるくらいでしょう。とはいえ、あらたまった場でのコメントや文章においては、頻繁に見聞きする言い回しです。
「禁じ得ない」の使い方
「禁じ得ない」が使われる場面は、ほぼ文章においてといえましょう。新聞や雑誌などメディアの記事、公的な文章、あらたまった文章、ビジネス上のやりとりなどで見られる表現です。
話言葉としては、会話ではまず耳にしませんが、スピーチや答弁、コメントなどにおいては登場する頻度も高くなります。
「~を」の部分に入る感情表現は、多岐にわたります。感動、驚き、戸惑い、怒り、憤り、笑い、涙、喜び、など枚挙にいとまがありません。
「禁じ得ない」の文例
- 被災者の方々が力を合わせて復興した街を眺め、感動を禁じ得なかった。
- 政治に関心を示し、デモにも参加する小学生を知り、驚きを禁じ得ず、話を聞いてみた。
- 匿名性に乗じて他者を傷つけ愚弄する発信を繰り返す人間に、怒りを禁じえない。
- あからさまな嘘をついて責任逃れに終始する政治家たちに憤りを禁じ得ない。
- 笑いを禁じ得ないのは、酔っ払いたちの口喧嘩の内容のくだらなさだ。
「禁じ得ない」の類語
「我慢できない」の意味と使い方
「我慢(がまん)できない」は、こらえられないこと、辛抱できないこと、感情や欲望の赴くままに行動してしまうこと、などを意味する言い回しです。
「~を我慢できない」「~することを我慢できない」などのようなかたちで用います。「禁じ得ない」と異なり、感情表現以外でも対象とします。
感情表現については、「禁じ得ない」に比べ、用いることのできる範囲は少なくなります。笑い、怒り、憤り、涙、など強い感情には使うことができますが、「戸惑い」「疑い」などの曖昧な感情に対して使用するのは不適切です。
- 私の話し方の癖をしつこくからかう鈴木君への怒りを我慢できず、猛然と抗議した。
- 卒業式の厳粛なな雰囲気の中、隣席の山田君の冗談に笑いを我慢できず、恥をかいてしまった。
「抑制できない」の意味と使い方
「抑制できない」は、意識的な努力で衝動や感情を抑えつけたり、コントロールすることが不可能なことを意味します。
「禁じ得ない」にくらべ、はるかに「コントロール不能」というニュアンスが強くなりますので、対象となる感情も多くはありません。例としては、怒り、恨み、憤り、などのネガティブかつ強い感情が主になります。
- 中村君は、バイト先の店長のパワハラ的言動に怒りを抑制できず、店長を殴ってしまった。
- 真由美さんは、他者への恨みが抑制できない苦しさをカウンセラーに相談している。
「止められない」の意味と使い方
「止められない」は、読んでそのまま、止めることができない、ストップできない、という意味の言い回しです。「止まない」という言い方も同様ですが、この場合は(やまない)と読みます。怒り、憤り、笑い、涙、などについてよく用いられる表現です。
- 坂本君は、大勢の前で前田君に侮辱的な言葉を投げつけられ、怒りが止められずに思わずこぶしをふりあげた。
- 担任の先生の冗談にA組の生徒たちの笑いが止まず、他の教室の先生が何事かと覗きに来た。