禁じ得ないとは?禁じ得ないの意味
湧き上がってくる感情や思いをどうしても抑えきれない、こらえることができないという意味の表現です。
禁じ得ないの説明
「禁じ得ない」は「~を禁じ得ない」という形で使われ、~の部分には感動や怒り、驚きなど様々な感情を表す言葉が入ります。日常会話ではほとんど使われませんが、新聞記事や公式な文章、スピーチなど改まった場面で頻繁に登場する格式のある表現です。例えば、被災地の復興の様子を見て「感動を禁じ得なかった」、理不尽な行為に対して「怒りを禁じ得ない」といった使い方をします。感情の抑制がどうしても効かない状況を、丁寧かつ強調して表現したいときに適した言葉と言えるでしょう。
改まった場で感情を表現するのにぴったりの、大人の語彙ですね。
禁じ得ないの由来・語源
「禁じ得ない」の語源は、古語の「禁ず」に由来します。「禁ず」は「こらえる・抑える」という意味を持つ動詞で、これに可能の助動詞「得(う)」の未然形「え」と打消しの助動詞「ず」が組み合わさって成立しました。つまり「禁じ+得(え)+ない」という構造で、「抑制することができない」という原義を保持しています。この表現は中世以降の文語表現として発達し、現代では格式ある文章語として定着しています。
格式高い表現ながら、情感豊かなニュアンスを伝えられる素敵な言葉ですね。
禁じ得ないの豆知識
面白いことに「禁じ得ない」は、感情表現だけでなく物理的な抑制不能にも使われることが稀にあります。例えば「笑いを禁じ得ない」は感情ですが、「噴火のエネルギーを禁じ得ない」といった自然現象への比喩的用法も存在します。また、この表現は法律文章や公文書でも頻繁に使用され、特に「遺憾の念を禁じ得ない」というフレーズは外交文書でよく見られます。さらに、若者言葉では「我慢できない」の代わりにジョークとして使われることもありますが、本来は非常にフォーマルな表現です。
禁じ得ないのエピソード・逸話
小泉純一郎元首相が2005年の衆議院解散時に「郵政民営化に反対する議員を見て、怒りを禁じ得なかった」と発言したことは有名です。また、作家の村上春樹さんはインタビューで「読者からの心温まる手紙に接すると、感激を禁じ得ない」と語り、読者との交流への感謝を表現しました。スポーツ界では、イチロー選手が引退会見で「長年の応援への感謝の念を禁じ得ない」とファンに向けた心情を述べ、多くの人々に感動を与えました。
禁じ得ないの言葉の成り立ち
言語学的に見ると、「禁じ得ない」は「動詞の連用形+得(う)+ない」という可能表現の否定形という構造を持ちます。この「~得ない」形式は、古語の可能助動詞「う」の未然形「え」に由来し、現代語では「理解し得ない」「同意し得ない」など、主に漢語系の動詞と結合して使用されます。文法的にはやや硬い表現で、話し言葉よりも書き言葉に適しており、主観的な感情よりも客観的な状況説明に用いられる傾向があります。また、この表現は日本語の敬語体系の中では「丁寧語」に分類され、公的な場面や改まった文章で好んで使用される特徴があります。
禁じ得ないの例文
- 1 深夜にSNSで昔の恥ずかしい写真を見つけて、笑いを禁じ得なかった。
- 2 久しぶりに実家の母の手料理を食べて、懐かしさと温かさに涙を禁じ得なかった。
- 3 締切直前になって大事なファイルを消してしまい、焦りと絶望を禁じ得ない。
- 4 好きなアーティストのライブで思いがけない曲が流れて、感激を禁じ得なかった。
- 5 雨の日に傘を持たずに出かけてしまい、自分の不注意に呆れを禁じ得なかった。
「禁じ得ない」と類語の使い分け
「禁じ得ない」には似た意味の表現がいくつかありますが、それぞれニュアンスや使用場面が異なります。適切に使い分けることで、より正確な表現が可能になります。
| 表現 | 意味 | 使用場面 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 禁じ得ない | 感情を抑制できない | 格式ある文章・公式発言 | 最も硬い表現 |
| 我慢できない | こらえられない | 日常会話全般 | 感情以外にも使用可 |
| 抑えきれない | コントロール不能 | やや改まった場面 | 衝動的なニュアンス |
| 止められない | ストップできない | 日常会話 | 自然な流れを強調 |
特にビジネスシーンでは、「遺憾の念を禁じ得ない」が公式な失望表明としてよく用いられます。一方、友達同士の会話では「我慢できない」の方が自然です。
歴史的な変遷と現代での使用実態
「禁じ得ない」は元々、平安時代の文語表現として登場しました。当時は「禁ず」という動詞に可能の助動詞「得(う)」が結合した形で、貴族の日記や公式文書で使用されていました。
- 明治時代:新聞や公文書で頻繁に使用されるようになり、近代的な用法が確立
- 昭和初期:ラジオ放送や演説で格式ある表現として定着
- 現代:ビジネス文書やニュース報道で依然として重要視される表現
言葉は時代と共に変化するが、「禁じ得ない」のような格式ある表現は、日本語の丁寧さを保つ重要な役割を果たしている
— 国語学者 金田一春彦
最近ではSNSなどで若者による逆説的な使用も見られますが、本来の格式を保った使い方が依然として主流です。
実際の使用例と注意点
「禁じ得ない」を使用する際には、いくつかの重要なポイントに注意が必要です。誤用を避け、適切な場面で効果的に使いましょう。
- 感情表現に限定:物理的なものには使用不可(例: 「ドアを禁じ得ない」は誤り)
- 否定形で固定:「禁じ得る」という肯定形は存在しない
- 格式の調整:カジュアルな場面では使用を控える
- 主語の明確化:誰の感情かを明確にすることが重要
正しい例: 「その光景を見て、感動を禁じ得なかった」 誤った例: 「お腹が空いて食事を禁じ得ない」 特にビジネスメールでは、クライアントへの失望表明などデリケートな場面で慎重に使用する必要があります。
よくある質問(FAQ)
「禁じ得ない」は日常会話で使っても大丈夫ですか?
基本的に日常会話ではほとんど使われません。格式ばった表現なので、ビジネスメールや公式文書、スピーチなど改まった場面で使用するのが適切です。友達同士の会話で使うと、冗談めかして聞こえることが多いです。
「禁じ得ない」と「我慢できない」の違いは何ですか?
「禁じ得ない」は感情の抑制ができないことに重点があり、格式高い表現です。一方「我慢できない」は感情だけでなく、物理的な欲求や衝動にも使え、より日常的な表現です。例えば「お腹が空いて我慢できない」とは言えますが、「お腹が空いて禁じ得ない」とは言いません。
「禁じ得ない」を使うときの注意点はありますか?
「~を禁じ得ない」の形で使い、~の部分には感情を表す言葉を入れます。また、否定形なので「感動を禁じ得ない」は正しいですが、「感動を禁じ得る」とは言いません。文語的な表現なので、話し言葉では状況に応じて使い分ける必要があります。
ビジネスシーンではどのように使われますか?
ビジネスでは「遺憾の念を禁じ得ない」が最もよく使われる表現です。取引先の不祥事や契約違反などに対して、失望や残念な気持ちを公式に表明する際に用いられます。また、謝罪文やお詫びの場面でも使用されることがあります。
若者言葉として使われることはありますか?
最近ではSNSなどで、あえて格式高い表現を面白おかしく使う「丁寧語ギャグ」として、「マジ感動を禁じ得ない」などのように使われることがあります。ただし、これはあくまで遊び心のある使い方で、正式な用法とは異なります。