「極めつけ」とは?
「極めつけ」は(きわめつけ)と読みますが、正しくは「極めつき」という言葉です。とはいえ、長い間に、今では「極めつけ」のほうが市民権をえて、使われる頻度も高くなっています。したがって、今回は「極めつけ」での解説となります。
「極めつけ」は大きく分けて3つの意味をもちます。
- 書画や刀剣、骨董類などで、専門家がその価値を鑑定し、優れたものとして価値を保証した鑑定書がついていること。また、その物品そのもの。
- 優れたものという定評があること。また、それそのもの。
- 歌舞伎用語として、ある役者の演技が、他のどの役者よりもすぐれていると定評があるはまり役のこと。
1番目の意味を読むと、なぜ本来「極めつき」が正しいのか予想できるかもしれませんね。漢字では「極め付き」ですから、よりイメージしやすいでしょう。
「極めつけ」と「極めつき」の違いについて
本来は「極めつき」が正しいことを、その由来から解説します。元来、書画、刀剣、骨董類などの価値を専門家が保証する鑑定書を「極め書き」「極め札」と称しました。
そのことから、優れていると定評のあるものを「極め書き(札)」が付いているもの、すなわち「極め付き」と称したのです。
一方、「極めつけ」の本来の意味は、対象の優れた事物に「極め書き(札)」をつけることです。とはいえ、辞書には「極めつけ」を「極みつき」と同じ意味で掲載しているものもありますし、現代では、優れた定評あるものを「極めつけ」と称する頻度のほうが高くさえあります。
「極めつけ」の使い方
辞書のうえでは、優れていると評価が定まっているものに対して用いる「極めつけ」ですが、慣用的な現代語としては、ネガティブな意味にも使われており、それが誤用とはされていません。
そのため、メディアなど言葉が重要な役割を担う業界においては、「極めつけ」の現代的用法は誤用であると社員に指示しているケースもあるようです。
「極めつけ」の文例
【優れたものに用いる例】
- この骨董品の皿は、鑑定家が魯山人のものだと認めた、我が家の極めつけの家宝だ。
- 今年のクリスマス・ディナーメニューは、当店極めつけの一品ばかりで組んだコースです。
- 歌舞伎に疎いなら、分かりやすい演目と、優れた役者の極めつけの役柄を教えてあげよう。
【悪いものに用いる例】
- ここの河川敷は、町で極めつけの不良たちがたむろしているから、夜は1人で行かないように。
- この事件は今でも極め付けの凶悪事件と言われ、嫌悪されている。
「極めつけ」の類語
「折り紙つき」の意味と使い方
「折り紙つき」は、「極めつけ」と同じ意味をもっています。なぜなら、この「折り紙」は、千羽鶴などを折る折り紙ではなく、「極め書き(札)」と同じく鑑定書を指すからです。
鑑定書にもさまざまな形態があり、鑑定の書面を二つ折りにしたもののひとつを「折り紙」と称しました。したがって、「折り紙つき」は、①鑑定家が優れていると評価を定めた事物、②優れていると世間から定評のある事物や人間など、を意味します。
「極めつけ」と同様に、ネガティブな意味にも使われますが、ひとつだけ異なる点は、歌舞伎の用語としての意味がないことです。
【文例①】田中君は、この営業所での折り紙つきのトップセールスマンだ。
【文例②】うちの店では10人をこえるバイトが働いているが、遅刻で折り紙付きといえば中村君だな。
「お墨つき」の意味と使い方
「お墨つき」(おすみつき)は、地位・権威ある存在からの承諾、保証などの意味です。かつて大名などの権威あるものが家来に与えた証明書に、墨で「花押(かおう)」と称される記号のような署名をしたことに由来します。
地位あるものからの承諾ですから、「社長のお墨付き」などがが正しい用法です。しかし、昨今は、有名スーパが消費者からの支持ある商品、という意味で「お墨つき」の言葉をキャッチコピーに取り入れたこともあり、使い方の線引きも曖昧になってきました。
なお、「お墨つき」は「極めつけ」「折り紙つき」と異なり、ポジティブな意味にのみ用いられます。
【文例】今回提出したイベント企画案は、役員会でお墨つきを得たのだから、是非とも成功させなければ!